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『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』を読みました

サカナとヤクザ: 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う

2018年73冊目の読了は、『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(著 鈴木智彦/小学館 初版2018年10月16日)です。書店で目にして手に取りました。

アワビ、ウニ、カニ、ウナギ。どれも高級食材で日常的に口にすることはありませんが、美味しいものばかりです。ところが本書によれば、売られているものには密漁・密流通品が多く含まれ(アワビは45%、ウナギの稚魚シラスは3分の2)、その取引は暴力団の資金源になっているのだそうです。

本書は、フリーライターで、ヤクザに関して数々の著書がある鈴木氏が、丸5年をかけた取材によりサカナとヤクザ(暴力団)との関係を描いたもの。

鈴木氏は、三陸でのアワビの密漁、そのアワビが出回っている築地市場、北海道で行われている“黒いダイヤ”といわれるナマコの密漁やロシアからのカニの密輸を取材。さらには九州・台湾・香港に足を運んでシラスウナギの国際密輸シンジケートへ迫り、密漁ビジネスの実態を明らかにしていきます。

本書でまず印象に残ったのが、鈴木氏の底知れぬ取材力です。密漁アワビが築地で売られていることを確かめるために、4カ月もの間仲卸会社の軽子(配送人)として働く。北海道ではナマコの密漁団とパイプが出来て“密漁社会のマラドーナ”と呼ばれる人物の誕生会に呼ばれたり、密漁に誘われたりします。

そして、業界誌の記者から「台湾・香港ルートに深く斬りこむと東京湾に浮かぶ」と“忠告”されながらも、台湾のシラスウナギ業者に接触し、ウナギ業界最大の暗部といわれる香港にある「立て場」(ウナギを洗い、選別し、出荷する作業場のこと)にも果敢に潜入。その徹底した現場主義には舌を巻きました。

もちろん、法の網をかいくぐり、取り締まりの手を逃れながら行われる密漁・密流通の様子は驚くばかり。北海道での「ダイバー死亡事故」は少なからず密漁と関係している、摘発を受け押収された密漁の道具が競売によって密漁団に買い戻される、カニの密漁には日本の大資本も噛んでいるといった話も目を引きました。

ただ何といっても、私たちが何気なく食べているものが、暴力団の資金源になっていることなど思ってもいないことで、言葉を失ってしまいます。

もっとも著者に言わせれば、「今の日本の漁業は、密漁や産地偽装などの諸問題がごろごろ出てくる。叩けば埃どころではない。こびりついた垢に近い。漁業者にしても変えなければならないことは分かっている。だが、出来ないのだ。なので蓋をする。そうして気づかぬふりを続けている」とのこと。

まさに“不都合な真実”で、日本の漁業が健全でないことだけは確かなようですが、問題は根深く、もはやなるようにしかならないと思わざるを得ません。

本書によれば、漁獲高が右肩下がりで落ち込んでいるのは、先進国で日本だけ。漁師の年収は200万円台となり、高齢化がどんどん進んでいるそうです。このままでは、海洋国なのに日本の漁業は衰退していくばかりでしょう。そうなれば、出所がわからないサカナがますます出回りそうな気がします。

本書では、サカナと関係が深い千葉・銚子の暴力団の話や、ソ連時代に、日本の情報と引き換えに北方海域で密漁が黙認されていた“レポ船”の話も出てきて、最初から最後まで面白く読みました。けれど、このまま土用の丑の日にウナギを食べ、冬にカニを食べていていいのか、何かスッキリしないものが残ってしまいました。

読後感(考えさせられた)

神代植物公園でバラを見てきました

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秋の陽気に誘われ、神代植物公園に足を運びバラを見てきました。神代植物公園は都内でも有数のバラの名所。秋バラは約300品種、5000本以上植えられているそうです。

バラは見頃が続いていて、園内は、家族連れ、ご夫婦、グループ、などたくさんの人で賑わい、皆さん思い思いに、美しい花の色と甘い香りを楽しんでいました。

今日は、「秋のバラフェスタ2018」のイベントのひとつ「ばら園コンサート」がちょうどあって、「Trio kardia」というユニットの演奏を聴かせてもらいました。青空の下で聴く音楽もなかなかいいものです。

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せっかくなので、バラのソフトクリームも食べて秋の休日を満喫しました。

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今日撮影したバラの一部です。面白いネーミングがあります。

(ドフトゴールド)

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(栄光)

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(プリンセス・ドゥ・モナコ)

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(エレガントレディ)

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(ファルツアゴールド)

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(マリア・カラス)

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(バイオレットカーソン)

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(聖火 ※虫がとまっています)

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(フロリック)

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(フレグラント・アプリコット ※蜂がとまっています)

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(カトリーヌ・ドヌーブ)

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(天津乙女)

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(モンパルナス)

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(ゴールドクローネ)

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『カラー版 絵はがきの大日本帝国』を読みました

カラー版 絵はがきの大日本帝国 (平凡社新書)

2018年72冊目の読了は、『カラー版 絵はがきの大日本帝国』(著 二松啓紀/平凡社新書 初版2018年8月10日)です。書店で目にして手に取りました。サイズは新書版ですが500頁近くのボリュームがあります。

私は、「絵はがき」というと観光地のお土産とか美術展の記念グッズくらいしか思い浮かびません。ところが、新聞がメディアの主役の時代、「絵はがき」は新聞を補完するメディアであり、宣伝やプロパガンダの重要なツールでした。

本書は、世界的な絵はがき収集家である米国のラップナウ夫妻の5万点のコレクションから390点を使って、日清戦争から太平洋戦争が終わるまで、“大日本帝国”の膨張と崩壊の歩みをたどるものです。

東洋の小国であった日本が、日清・日露戦争をきっかけとして領土を拡張。産業の発展により次第に世界の列強に並び立つようになり、満州事変を契機に中国に強い足場を構築。そして日中戦争、太平洋戦争に突き進んでいく過程が、多種多様な絵はがきと著者のわかりやすくポイントを押さえた解説によって綴られていきます。

歴史の流れを絵はがきで追っていくというのは、それだけでもユニークですが、登場するテーマも歴史上有名なものだけではありません。台湾・樺太経営といったあまり知られていないことや、スポーツ大会、博覧会といった日常的なものまで多岐に渡り、最初から最後まで興味深く読みました。

もちろん、絵はがきは初めて見るものばかりです。「メディア」と言われるだけのことはあって、戦争、事件、災害、イベント、風景、広告・宣伝など、種類の多さには驚きましたが、臨場感のある絵はがき、風刺性やデザイン性にすぐれた絵はがきはとても印象的。文字だけではわからない当時の“空気”を感じたような気がしました。

それにしても、歴史は奥深く、知らないことだらけです。

読後感(面白かった)

*本書に登場する絵はがきの一部

(日露戦争 P48・49)

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(朝鮮総督府発行 P132・133)

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(東京大正博覧会 P230・231)

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(極東選手権競技大会 P250・251)

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(関東大震災 P274・275)

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(あじあ号 P336・337)

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