えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『五衰の人』を読みました

五衰の人 三島由紀夫私記 (文春学藝ライブラリー)

今年13冊目の読了は、『五衰の人-三島由紀夫私記』(徳岡孝夫/文春学藝ライブラリー 初版2015年10月20日)です。1996年に単行本として出版された後、文庫版、そして本書(文春学藝ライブラリー)が出版されたようです。三島由紀夫の本で読んだのは、「仮面の告白」、「潮騒」、「金閣寺」くらいしかなく、ファンというわけでもないのですが、先日読んだ「言葉はこうして生き残った」で紹介されていて面白そうなので手に取りました。

三島由紀夫は、市ヶ谷の自衛隊駐屯地で、なぜ自決しなければならなかったのか。本書では、三島と親交があった著者が三島の著者や思想、さらには日常の様子から、記者らしく冷静に分析し、そして三島由紀夫とは何者なのかを語っています。

事件があったのは昭和45年。私は中学1年生でしたが、事件の記憶はうっすらとしか残っていません。本書にあるように、その前年には東大の安田講堂事件や国際反戦デー闘争があり、ベトナム戦争も継続中で、この時代にあった何か不穏なものを本書からも感じますが、一方で、世間には昭和元禄と言われるような弛緩した空気もあったようで、そのギャップに不思議な感覚を覚えます。事件があったすぐ近くで、数人の職員が昼休みにバレーボールをしている場面は、その象徴ともいえ、印象的です。

また、三島が自決した後に、監禁された自衛隊幹部が三島の同士に語りかける場面も一種驚きがありました。本書のテーマはもちろん三島由紀夫なのですが、背景となった時代や、私たちの世代には決してわかり得ない、戦争を体験した人が持つ思いにもとても興味深いものがあります。

事件から半世紀近くが過ぎました。三島由紀夫が今の日本を見たら、果たして何を思うのでしょうか。

読後感(とてもよかった)