えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『子供の死を祈る親たち』を読みました

子供の死を祈る親たち (新潮文庫)

今年22冊目の読了は、『子供の死を祈る親たち』(押川 剛/新潮文庫 初版平成29年3月1日)です。HONZの紹介記事で知り手に取りました。著者の本は一昨年に『「子供を殺して下さい」という親たち』を読み、強烈な印象を受けました。

著者は、引きこもりや暴力をふるう子供などを説得し、精神病院へ移送する仕事をしているのですが、本書では、まず著者が移送で関わった6つのケースを紹介し、次に日本が直面している家族の問題と社会的背景を分析、さらに行政・医療現場の実態やこれからの家族のあり方についても言及しています。

6つのケースとしては、15年間ひきこもり生活を続ける32歳の男、薬におぼれるキャバレーのホステス、アイドルにのめりこむ青年などが紹介されているのですが、その内容には驚くばかりです。もっとも、現在の日本では、そんなに珍しいことではないのかもしれません。

著者は、このような状況を生み出す原因として、本人の気質や挫折体験以上に、そこまで本人を追い込んでしまった親の存在を重くみています。そして、そのような親を生み出しているのは、日本の社会全体が消費社会=総強迫性社会であるからだと言います。多くの人(親)が、一億総中流の幻影や学歴信仰を引きずったまま、家を持ち、いいものを身に着け、いい学校、いい会社にはいることだけに価値を置く。その結果「~でなければならない」「~くらいできて当然」という考え方を、子供に押し付けようとする。そんな社会、そんな親が、家族の関係性を希薄にするどころか家族そのものを破壊して子どもを追い込み、ひきこもり、暴力行為、アルコール・薬物依存といった悲惨な状況をもたらしているということでしょう。

また著者は、相模原の障害者施設で起きた殺傷事件について、うまく対応していれば防げたかもしれないことを示唆し、あのような惨事を二度と起こさないためにも、行政や医療現場などにおける情報共有や連携がますます重要になってくるとしています。確かにその通りだとは思うのですが、私達の考え方が変わり、社会や人間関係のあり方が変わっていかないと、親族間のトラブルや、思いもよらない事件はこれからも増え続けるような気がしてなりません。

読後感(よかった)