えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『定年後』を読みました

定年後 - 50歳からの生き方、終わり方 (中公新書)

2017年36冊目の読了は、『定年後』(楠木新/中公新書 初版2017年4月25日)です。書店でタイトルが目に飛び込んできて、すぐに手に取りました。

著者は、生命保険会社で定年を迎え、現在は執筆活動や研修・講演活動を行っているそうですが、本書では自らの経験や取材をもとに、定年後の第二の人生を充実させるためのヒントを示しています。

著者によると、60歳で定年退職後、まだ自立した生活が過ごせる74歳までの自由時間を1日11時間、周囲の助けが必要になってくる75歳から10年間をその半分とすると、合計時間は8万時間にもなり、これは40年間勤めた総実労働時間より多いそうです。
たとえ会社生活が不遇なものだったとしても、終わりよければすべてよしで、この8万時間が輝くものになれば、人生の色彩は一変し活きたものになる、人生は後半戦こそが勝負だと著者は言います。

もっとも、本書でも明らかにしているように、定年退職後も生き生きと過ごすのは、なかなか難しく、時間をつぶすことに四苦八苦する人も多いようです。なんだかんだいっても、会社はある意味住み心地のいい場所であり、そこにどっぷりつかっていた者にとっては、時間が来たから違う環境で暮らせと言われても、そう簡単にはできないのが現実なのかもしれません。しかし、平均寿命が延び、定年後の時間が大幅に増えた時代においては、会社生活だけでなく、長いスパンで自分の人生プランを考え、その実現を目指していくことが、豊かな人生を送る鍵になるのだということはよく理解できます。

2年ほど前に、会社のライフプラン研修を受講しましたが、内容は、退職金、健康保険、年金といった生活に直結するテーマの話が大半でした。最後に、退職後は「きょうよう(今日の用事)と、きょういく(今日行くところ)」が大事という話が付けたし程度にあって、出席者から何ともいえない笑い声が起きたことを覚えていますが、著者からすれば、付けたしの話の方が重要です。
自分にとってみても、これまで定年後をどうするかといっても、せいぜい65歳まで働くかどうかといったことくらいしか考えてきませんでしたが、本書を読み、また定年がいよいよ迫ってきて、そんなことより、もっと考えるべきことがあるということを、今更ながら思い知りました。

著者は、身体が健康であれば、定年後74歳までは自分が目指すものに挑戦し、悠々自適な生活というのは、75歳を超えた後期高齢者になってから考えればいいと言っています。本書だけでなく、いろいろな事例を見ても十分理由があることだと思います。少し遅いかもしれませんが、定年後というより、74歳までどんな生き方をめざすのか、本書も参考にしながらよく考えようと思いました。

読後感(とてもよかった)