えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『断片的なものの社会学』を読みました

断片的なものの社会学

2017年40冊目の読了は、『断片的なものの社会学』(岸政彦/朝日出版社 初版2015年6月10日)です。先日行ってきた荻窪のTitleで目にして、手に取りました。

本書は社会学者である著者の随筆集で、自身のフィールドワークや日常生活のなかで胸によぎった思いを綴ったものです。紀伊國屋じんぶん大賞2016年受賞作だそうです。

本書には17編のエッセイが収録されています。もともと、社会時評的な本はあまり得意ではないのですが、本書はタイトルに「断片的」とあるだけに、読み始めは何かとりとめのない感じがしてなりませんでした。特にインタビューがメインの作品は自分の読み方が浅いせいもあって、著者の意図がもうひとつつかめず、文字が頭の中を通り抜けていきました。ただ、読み進んでいくうちに、印象的なフレーズが目に飛び込んでくるようになり、次第に書かれていることに共感することが多くなってきました。

著者は、今私たちの社会は排他的で、狭量で、息苦しいものになっているといいます。確かに、自分にとって意味のないものには向き合おうとせず、それどころか排除しようとする。常に白か黒かの選択を求められてグレーであることは許されない。最短距離での正解を求められて寄り道は評価されない。そんな風潮がどんどん社会に広がっているような気がします。

世の中は、初めから意味のあるものだけで成り立っているのではない。断片的で意味のないものが集まって、そこから意味あるものが生まれることもある。そんな発想をする人が多くなれば、世の中の景色も少しは変わってくるのかもしれません。

読後感(よかった)