えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『「下り坂」繁盛期』を読みました

「下り坂」繁盛記 (ちくま文庫)

今年43冊目の読了は、『「下り坂」繁盛記』(嵐山光三郎/ちくま文庫 初版2014年7月10日)です。本書の前に読んだ『「超」実用的文章レトリック入門』(朝日新書)の中で、「漸降法」というレトリックを解説する際に紹介されていた本で、面白そうなので、手に取りました。初出は2009年です。

本書は、“人の一生は、「下り坂」をどう楽しむかにかかっている。真の喜びや快感は「下り坂」にあるのだ”という著者が、自分自身の楽しい下り坂の日々を綴ったエッセイです。特に意味のないような面白おかしい話が多く、気軽に読むことができます。

前に読んだ、『定年後』(中公新書)では、人生は後半戦が勝負であり、定年後の生き方をよく考えなくてはならないといったことが書かれていて、反省させられたばかりです。ところが、著者は「人は年をとると『まだまだこれからだ』とか『第二の人生』とか『若い者には負けない』という気になりがちだ。そういった発想そのものが老化現象であるのに、それに気がつかない。下り坂を否定するのでなく、下り坂をそのまま受けいれて享受していけばいいのだ」と言っていて、違った角度から人生を考えさせてくれます。著者からすると、社会とつながるとか、家庭で居場所をつくるとか、そういうことは大した問題ではなさそうです。

もっとも、本書で描かれている著者の姿は、旅をしたり、友人と交流を重ねたり、俳句を作ったりと、それなりに忙しい毎日です。「定年後」で描かれているような、今日の用事や今日行くところを一生懸命に考えるといった生活とは無縁です。

最近「暴走老人」が話題になります。下り坂を受け入れることができないことが、暴走する理由のひとつかもしれません。ただ漫然と無為な日々を過ごすのは論外としても、年をとったらあくせくせず、肩の力を抜いて生きていくことは大切なことに思えます。

読後感(まずまず)