えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『人生の節目で読んでほしい短歌』を読みました

人生の節目で読んでほしい短歌 (NHK出版新書)

今年51冊目の読了は、『人生の節目で読んでほしい短歌』(永田和宏/NHK出版新書 初版2015年3月10日)です。この一カ月ほどで著者に関係した本を2冊読みましたが、本書は書店でたまたま目にして手に取りました。著者の選歌集を読んだのは岩波新書の『近代秀歌』以来です。

本書は、著者の永田和宏さんが、人生の節目で詠われた短歌を選んで解説を加え、さらに歌にまつわる自分の思いを綴ったものです。全部で200首ほどの短歌が、第一部の「若かりし日々」では「恋の時間」「青春の日々」「デモの隊列」「卒業」「結婚」といったテーマに分けて、第二部の「生の充実のなかで」では、「出産」「労働の日々」「貧しかりし日々」「子の死・親の死」「退職」「ペットロス」といったテーマに分けて、第三部の「来るべき老いと病に」では、「老いの実感」「病を得て」「ものを忘れて」「介護の日々」「死を見つめて」といったテーマに分けて、取り上げられています。

安保闘争や大学紛争、子供の死やペットロスといったテーマはなかなか実感が伴いませんが、多くの歌は何かしら経験があったり、「老い」のように、これから直面するものであったりするため共感するものが多く、過去を思い浮かべながら、また自分と置き換えながら味わいました。

著者は、「生活のなかで歌を作ることによって、その時間が特別な意味を持つようになる」「一首一首の歌のなかには、その一瞬一瞬の<時の断面>が輝いているはず」と述べています。『歌に私は泣くだらう』や『家族の歌 河野裕子の死を見つめて』を読んだときにも感じたことですが、自分が生きていた瞬間を言葉に残すことができる短歌や俳句は、とてもいいものだと思います。もっと若い頃に、それに気づいていればと少し後悔しています。

著者はまた、『一瞬一瞬の時間は、自ら意識しないと、ただ漫然と流れてゆき、記憶の奥深くしまいこまれて、やがて風化してゆくだけのものになってしまいがちです。過ぎ去った時間は、すぐにほかの時間のなかにもぐりこんで隠れてしまおうとする。』とも述べています。時間が有限であることを意識せざるを得ない年齢となり、せめてこれから、自分の足跡が風化して消えるようなことがないようにしたいと、本書を読んで強く思いました。

読後感(よかった)