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『限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択』を読みました

限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択 (朝日新書)

2017年55冊目の読了は、『限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択』(毛受敏浩/朝日新書 初版2017年6月30日)です。

本書も、この前に読んだ『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』と同じく、日本の人口減少をテーマとしていますが、『未来の年表』とは異なり、外国人定住政策の専門家でもある著者は、日本の「限界国家」化を避けるために、しっかりとした移民政策を確立したうえで、移民の受け入れを本格化すべきだとしています。

本書によれば、日本に定住している外国人は2016年末現在で238万人、総人口の1.9%ほどで、欧米に比べると極端に小さい数字だそうです。移民に頼らなくても、何とかできたからだと思いますが、外国人に対する日本人独特の感情があることも、定住外国人が少ない理由のひとつでしょう。まして、「移民」という言葉に対しては、ネガティブなイメージを持つ人が多く、議論そのものがタブーであるかのような節があります。

移民受け入れの反対意見としては、「犯罪が増える」「日本人の労働力を活用すべき」「日本人の職が奪われる」「社会保障費が増える」「人口減でも豊かな国は可能」「生産性が上昇すれば大丈夫」といったことがあげられるそうです。著者はこれに対し、様々なデータや実例などをもとに、その意見が当たらないことを示し、また、移民受け入れに成功した国と失敗した国を紹介し、日本の移民政策においてとるべき方向性を提案しています。著者の主張が本当に妥当なものなのか判断はつきませんが、しっかりした裏付けのもとに考えが述べられていて、かなり説得力があります。

著者は、「人口減少と高齢化よって、われわれの日々の生活で当たり前のこととして受け止めてきた快適性や利便性、安全性が少しずつゆらぎ始めている。」と言います。今はまだ小さなゆらぎで、気づく人は少ないのかもしれません。しかし、大きなゆらぎがやってくるのは間違いありません。その時になって悔やむことがないよう、「移民」をタブー視することなく受け入れについて今こそ議論すべきではないか、また、それは私たち大人の責任ではないか、本書を読んで強く思いました。

読後感(よかった)