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『逆説の法則』を読みました

逆説の法則 (新潮選書)

2017年58冊目の読了は、『逆説の法則』(西成活裕/新潮選書 初版2017年5月25日)です。書店で目にして手に取りました。

著者は「渋滞学」で評判になった物理学者です。本書では、「大企業の経営不振」「格差社会の進行」「社会保証制度の崩壊不安」など、日本が直面している問題の原因が「長期的視野」の欠如にあるとし、マイナスの選択が長期的にはプラスをもたすことを多くの事例から分析して「長期的視野」の重要性を訴えています。

本書では、まず〈個人〉〈組織〉〈社会〉において、マイナスが転じてプラスになる逆説的な事例を具体的に紹介しているのですが、オセロの戦略、工場の稼働率、車線の選択、エレベータや電車の乗り方など、なるほどと思わせるものばかりです。混んでいる電車の次の方が空いているというのは、よく経験することですが、その理由がよくわかりました。

著者はさらに、様々な逆説的事例の背後にあるロジックを4つの法則-「空けるが勝ち」「分けるが勝ち」「かけるが勝ち」「負けるが勝ち」-としてまとめ、それぞれわかりやすく解説しています。学問的な難しさはないので、何かしら判断に迷ったときは、この法則を使って決めるとことができそうです。

「損して得をとる」「苦あれば楽あり」「急がば回れ」「急いては事をし損じる」「情けは人の為にならず」といったことわざが、科学的にも正しいことが本書で明らかにされています。
しかし、今の日本の社会はこれらの言葉とうらはらに、まず自分の得を考え、苦労することを厭い、すぐに結果を求めるといったことが当たり前のように。「長期的な視野」の重要性は本書で理解できましたが、それが浸透していくためには、私たち一人一人が「利他的」になることが欠かせない気がします。いざとなると難しいかもしれませんが、まずは自分のできる範囲でそんな生き方を心がけたいと思いました。

読後感(とてもよかった)