えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』を読みました

母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記

今年79冊目の読了は、『母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』(松浦晋也/日経BP社 初版2017年8月7日)です。書店で目にして手に取りました。

本書は、元日経BP社の記者で現在はジャーナリストとして活動している著者が、認知症の母親をひとりで介護する日々を綴ったものです。娘やお嫁さんではなく、男性(しかも50代の独身)が親の介護について書いた本は珍しく、また自分の年齢が著者と近いこともあって、最初から最後まで興味深いものがありました。

介護の本は昨年、エッセイストの岸本葉子さんが父親の介護について書いた『週末介護』(晶文社)を読みましたが、介護に奮闘する中でユーモアも感じられ、心あたたまる読み物といった印象を持ちました。
一方本書は、ドキュメンタリータッチで岸本さんとは趣がだいぶ異なります。母親との口論、排泄を初めとする様々トラブル、そしてそれらへの対処で精神的・経済的に追い詰められていく様子、そんな深刻な事態の中でもとにかく必死に介護を続けようとする著者の姿が、リアルに描かれています。

読み進むうちに、著者を追体験しているような感じになってきたのですが、読み終えて思ったことは、「自分はとてもここまでできないだろう」ということ。精神のバランスが崩れ「死ねばいいのに」という独り言が出てきたこと、ついには母親に手をあげてしまったことも包み隠さず書かれているのですが、そんな中でも母親を支えようとする姿には頭が下がります。結局、母親は介護施設に入所することになりますが、その際に担当の医師から声をかけられて著者が思わず涙する場面ではこちらも胸が熱くなり、「本当によく頑張りました」と声をかけたくなりました。

本書では、介護保険を使うことで、母親だけでなく著者自身も救われる様子が描かれています。本書の前に読んだ『教養としての社会保障』(東洋経済新報社)で、著者の香取照幸さんが「社会保障の目的は、落ちこぼれた人間をつくらず、誰もが常にプレーヤーとして社会の中に存在している社会をつくること、自分の尊厳を守り希望を持って自立して生きていける社会をつくることにある」と語っていましたが、本書を読んでその意味するところが少しわかったような気がしました。

歳を重ね、自分自身の介護も遠い世界の話ではなくなってきましたが、いくつになっても健康で自立した生活を送りたいものだと心から思います。

読後感(よかった)