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『地名の謎を解く 隠された「日本の古層」』を読みました

地名の謎を解く: 隠された「日本の古層」 (新潮選書)

今年80冊目の読了は、『地名の謎を解く 隠された「日本の古層」』(伊東ひとみ/新潮選書 初版2017年7月25日)です。書店で目にして手に取りました。

著者は、「地名はさまざま時代の人間の営みを反映して生み出され、幾多の曲折を経て受け継がれ、また混在しながら使われてきたものであり、その渾然の姿はまさに「森」(=「地名の森」)の趣がある。その深奥には、日本人の心の古層につながる世界がある」と語っています。
本書は、著者がその森に入り込み、日本のさまざまな地名について、名づけられた理由や歴史的変遷を、多くの研究文献、また古事記、日本書紀、風土記、万葉集といった歴史書、さらには縄文人・弥生人の世界に言及しながら明らかにしたものです。地名が名づけられた理由は実にさまざまで、本書で初めてその謂れを知った地名も多く、地名の変遷もとても興味深いものがありました。

本書で一番心に残ったのは、“生きた言葉の化石”ともいわれる地名には縄文語の痕跡が残っているかもしれないという指摘です。縄文時代の人々が話していたコトバがどこかの地名になっているかもしれないと考えると、時空を超えたロマンを感じます。

一方で、その土地の来歴とは全く関係ない「きらきら地名」「ひらがな地名」「合成地名」などは、その土地に根が張れるのだろうか、千年、二千年経って言葉の化石として残っているのだろうかと考えてしまいます。難解で読みにくい、合併があったなど、その地に住んでいる人にとってはやむを得ない事情があるのかもしれませんが、由緒ある地名が突然消失するのはとても残念なことです。
本書によれば、千葉の匝瑳市、兵庫の宍粟市は、難解地名を逆手にとって知名度をあげようとしているそうですが、その心意気を応援したくなります。

たかが地名、されど地名。本書で地名の奥深さを感じました。

読後感(面白かった)