えむと、メモランダム

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『悩める日本人「人生案内」に見る現代社会の姿』を読みました

悩める日本人 「人生案内」に見る現代社会の姿 (ディスカヴァー携書)

今年81冊目の読了は、『悩める日本人「人生案内」に見る現代社会の姿』(山田昌弘/ディスカヴァー携書 初版2017年8月15日)です。書店で目にして手に取りました。著者の山田さんは、「パラサイト・シングル」「格差社会」といった概念を生み出したことで有名な社会学者です。

本書は、読売新聞の「人生案内」の回答者でもある山田さんが、新聞読者から寄せられた相談を通して、価値観の多様化が進むなかで、それに対応できない現在の日本社会の姿を読み解くものです。山田さんの著書は何冊か読んだことはありますが、読売新聞は購読していないので、「人生案内」の回答者になっていることはまったく知りませんでした。

山田さんは、人生案内に寄せられる相談には3つの特徴的な傾向-“多様な愛や性の形に関する相談”、“中高年のパラサイト問題”、“夢を見ていられない若者たち”-があるとし、本書ではこの3つの特徴に分けて、実際の相談と山田さんの回答が全部で23例紹介されています。
“多様な愛や性の形に関する相談”では、「女装する夫にショック」「70代男性 年下の彼に未練」「息子は同性愛者なのか」「性的少数者 就活どう臨む」「妻が不倫 謝罪されたが苦しい」といった相談、次に“中高年のパラサイト問題”では、「60代息子が主夫 情けない」「30代息子 教授になれるか」「自慢の娘 さえない生活」「働かない40代息子」といった相談、そして“夢を見ていられない若者たち”では、「夢は考古学者 本心言えず」「リポーターの夢 あきらめるべきか」「声優の夢 限界感じる」といった相談の紹介があります。

山田さんによれば、価値観の多様化が進み日本社会はモデル(お手本・型)なき時代に突入している一方で、日本に昔からある「世間体」という圧力が強くなっていて、それが悩みや相談を増やしているのだそうです。とりわけSNSの影響もあって、「世間体社会」が加速度的に進行し、過剰にリスクを恐れ、リスクを避ける意識が日本の社会を縮こまらせていると指摘しているのですが、それが生きづらさに拍車をかけます。

価値観の多様化ということは、かなり以前から言われていることで、これからも言われ続けるでしょう。ただ本当にそれが意味を持つのは、その多様な価値観をお互いに認め合ってこそだと思います。ところが、認め合うどころか排除してしまう、自分の考えと少しでも違うとクレームをつける、そんなごく一部の人の意見を気にして自主規制する、といったことが最近は顕著になってきたような気がします。多様化のなかの偏狭化という複雑な社会では、生き方に悩む人はこれからも増え続けていくに違いありません。

山田さんは、「人のことは別に関係ないとみんなが思えたらいいけど、そうはなっていない。むしろ関係ない人が関係ない案件に文句をつける社会になっている。どうしたらいいか、誰かに相談したくなる」と語っています。相談を受ける回答者が相談したくなるというのは笑い話にもならず、つくづく考えさせられます。

読後感(よかった)