えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』を読みました

パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学

今年84冊目の読了は、『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』(池谷裕二/クレヨンハウス 初版2017年8月18日)です。池谷さんの著書は、これまで『脳には妙なクセがある』(扶桑新書)と『ココロの盲点』(朝日出版社)を読みましたが、いずれもとても面白かったことを覚えています。

本書のことは、書評サイト「HONZ」の仲野徹氏のレビューで知りました。その時は“子育て色”が強い印象があり、もう自分には関係ないから読まなくてもいいかなと思っていました。ところがその後、同じ「HONZ」で出口治明さんが「単なる子育て本ではなく、子育てをフックとして脳の構造を解き明かした傑作である。」と書かれていて、思い直すことに。早速書店に出向いて手に取りました。

本書は、池谷さんのお子さんが生まれてから4歳の誕生日を迎えるまで、1カ月ごとの成長の記録と脳科学に関するコラムで構成されていて、微笑ましい「こぼれ話」も添えられています。
内容は出口さんのコメントに尽きるのですが、「父親は子育てに参加すればするほどオキシトシン(相手を絶対的に信じ、愛情を注ぐホルモン)の濃度が上昇する」、「脳の神経細胞は3歳までに残った30%を一生使う」、「赤ちゃんの脳には胎児の頃の記憶が残っている」、「メンタルローテーション(頭の中で自由に物体を回転させて眺める能力)は人間的成長の駆動力で、かしこさ、気遣い、共感、自制心といったものにつながっている」、「才能ある人とは反射力(その場に応じて瞬発力と即興性を持った合理的な判断ができること)を上手に使える人であり、反射力を育てるには幼児期の体験が大事」など、驚き感心する話の連続で興味は尽きませんでした。

もちろん育児がテーマの本なので、池谷さんの子育てに関する考え方や、池谷さんの“パパぶり”を通して実際どんなことをしたのか知ることができます。
池谷さんが考える本来の育児の姿は、「親の希望通りの子に育て上げる」のでなく、「親なんていなくても立派にやっていける子になる」ように導くことです。そのためご自身は、「理解力」「対処力」「忍耐力」など社会人にも必要な能力を、お子さんが自分の力で身につけられるよう気を使ってきたと語っています。早い段階で文字や数字を教えたり、3歳で日記を書かせたりと驚くことも多いのですが、決して英才教育を施しているわけではなく、そういった力をつけせるための手段ということになるのでしょう。(ちなみに池谷さんは、お子さんを「お受験」させる予定はないそうです。)もっとも実際は、言うほど簡単ではないことは池谷さんも認めていて、池谷さんも普通に悩みながら子育てをしています。

自分を振り返ってみると(随分昔の話ですが)、池谷さんほど育児には参加しておらず、まして「人間としてどんな能力を身につけさせるか」など考えもせず、池谷さんとは雲泥の差です。いまさらどうしようもないのですが、もしこの本がもっと前に出版されていて、この本を参考に子育てをしたらどうなっていただろうかと、ついつい考えていました。

本書を読んで、池谷さんの考え方には共感できるところが多くありました。それは、池谷さん考え方の根底に「人として何が大切なのか」という視点があるからだと思います。「一流のスポーツ選手、著名な芸術家のように1つの才能が突出していることは、職業によっては重要で素晴らしいことだけど切り立った山のよう。一般的には、高い山には広い裾野が必要。得意なものを伸ばすと同時に、苦手な部分も手厚くして裾野を広げることが肝心。」この言葉は特に心に残りました。

本書は池谷さんのお子さんが4歳になったところで終わりです。少し興味本位かもしれませんが、この続きをぜひ知りたいものです。

読後感(とてもよかった)