えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『インパール作戦従軍記-一新聞記者の回想-』を読みました

インパール作戦従軍記―一新聞記者の回想 (岩波新書 黄版 269)

今年99冊目の読了は、『インパール作戦従軍記-一新聞記者の回想-』(丸山静雄/岩波新書 初版1984年6月20日)です。この夏に、NHKで放送された『戦慄の記録 インパール』という番組を見て、太平洋戦争で最も無謀とも言われている「インパール作戦」の悲惨さがずっと心に残っていました。そのせいか新聞広告に書かれていた“アンコール復刊”という文字がすぐ目に入ってきて、買い求めることに。表紙は黄判、手に取ったのは第11刷りでした。

本書は、朝日新聞の記者としてインパール作戦の最前線を取材した著者が、従軍して40年が経って、当時を回想しながら書き綴ったものです。全体は3部構成になっていて、一「インパール従軍」では、従軍までの経緯と従軍・戦闘の様子が、二「インパール作戦考」では、作戦のあらましと作戦に対する考察が、三「敗走千里」では、戦いに敗れ、撤退する日本軍の想像を絶する実態が描かれています。

何の裏付けもない夢物語のような作戦計画。補給を無視し、思いつきとしか考えられない大量の牛・馬・象を引き連れての行軍。勝算のない攻撃を執拗に命令する上官。兵士とは別世界の将校の優雅な生活。飢えと病に苦しみ、イギリス軍の攻撃に怯えながら無残な姿で退却する兵士たち。極限状態のなかで精神に異常をきたす者とそんな状態でも仲間を助けようとする者。この作戦がいかに無謀で、異様で、悲惨なものであったかは、NHKの番組でも明らかにされていましたが、本書でもそれが如実に記されていて暗澹たる気持ちにさせられました。

著者は「インパール作戦が終わったあとも部隊長、参謀、司令官たちは栄進するか、他に転勤した。敗戦の責任をとるものはなく、戦場を遠く去るものが多かった。しかし戦場の兵隊には転勤、転属はめったにない。…五体満足な限り、戦場から抜け出すことはできない」と書いています。NHKの番組でも、自分には責任がないと言い放つ将校たちには驚くばかりでしたが、本書を読んでも、一体何のため、誰のための戦いだったのかということを考えざるを得ませんでした。

この作戦ではおよそ3万人もの尊い命が失われました。町が一つ無くなるくらいの大きな犠牲です。犠牲を無駄にしないためには、インパール作戦の記憶を風化させないこと、そして二度と戦争しないことに尽きると思います。

読後感(考えさせられた)