えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『競争社会の歩き方』を読みました

競争社会の歩き方 - 自分の「強み」を見つけるには (中公新書)

2017年100冊目の読了は、『競争社会の歩き方』(大竹文雄/中公新書 初版2017年8月25日)です。書店で目にして、手にとりました。

著者の大竹氏は大阪大学社会経済研究所の教授ですが、NHK EテレのTV番組『オイコノミア』にも出演され、お笑い芸人の又吉直樹さんを相手に、日常のさまざまな出来事を経済学の視点から分析されています。

大竹氏は、日本では否定的にとられがちな「競争」は決して悪いことではなく、「競争にさらされた方が自分の長所を知って創意工夫ができるようになり、それが社会の発展・活性化につながる」ものだとして、本書では、身近な問題を経済学・行動経済学の観点から考察し、競争の意味や競争社会を生きていくヒントをわかりやすく解説しています。

チケット転売問題や価格対抗広告からみる価格戦略、落語や小説と経済学の関係、怒り・謝罪・ストレスといった感情的な問題と経済の関係、教育・選挙・女性活躍といった社会的な問題と経済の関係、格差社会の真実の大きく5つのテーマに分けて話が進みますが、取り上げられているエピソードはどれも興味深く、読み進むたびに心の中で“なるほど”と呟いていました。

特に印象に残ったのは、「発生確率がわずかなものは、確立を大きめに認識し、ほぼ確実に発生するような事象に対する確率の認識は過少になる」、「人の意思決定はデフォルト(初期設定)の選択に大きく影響されてしまう」、「損を取り戻すために、より大きなリスクをとり、さらに大きな損失を被る」、「反競争的な教育を受けた人たちは、利他性が低く、協力に否定的で、互恵的ではないが、やられたらやり返すという価値観を持つ傾向が高い」、「姉をもった男性は競争的報酬制度を好まない傾向がある」といった話ですが、経済の話でありながら、心理学や脳科学の話のような感じがするのが面白いところです。

経済の停滞、高齢化、人口減少と、日本をとりまく状況は厳しいものがあります。著者が言うようにリスクを避け、競争から逃げていては、衰退への道を転げ落ちていくだけしょう。切磋琢磨という言葉があるように、励まし合い競い合うことを当たり前のこととし、日本的な常識を見直して、社会制度、教育制度、働く環境を変革していくことがこれからの日本に求められていること、また経済学はそれに資するものであることが、本書を読んでよくわかりました。

読後感(考えさせられた)