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『息子が人を殺しました 加害者家族の真実』を読みました

息子が人を殺しました 加害者家族の真実 (幻冬舎新書)

今年102冊目の読了は、『息子が人を殺しました 加害者家族の真実』(阿部恭子/幻冬舎新書 初版2017年11月30日)です。「人権問題」は仕事に少し関係しているため、気になって手に取りました。

著者は、日本で初めて犯罪加害者家族の支援活動を始めたNPO法人「World Open Heart」の代表者です。2008年から現在に至るまで、1000組以上の加害者家族を支援してきたそうですが、本書では、ある日突然に、犯罪加害者の家族になってしまった人たちの実態を紹介し、支援活動の動向や活動に対する思いが綴られています。

日本中を震撼させるような酷い事件が起きた後、加害者の家族が自殺するといったことはこれまでもあり、また最近では、芸能人が自分の家族の犯罪について謝罪するといったこともよく見かけます。しかし本書では、重大犯罪でなくても、そしてどこにでもある普通の生活を送っている人でも、犯罪者の家族になったとたん悲惨ともいうべき状態に追い込まれるという、ある意味恐ろしい事実が明らかにされています。

小さい子を抱えての引っ越し、屈辱的な警察の取り調べ、被害弁償や損害賠償の肩代わり、意に反しての退職・転職・転校、悪意に満ちたいやがらせ。加害者本人でないのに、なぜこんなひどい仕打ちを受けなければならないのか、読んでいて心が痛みました。

日本では、犯罪被害者や被害者家族に対する中傷やプライバシー侵害は人権問題であるとして、法律(犯罪被害者等基本法)が整備され、「犯罪被害者週間」を設けて啓発活動も行われていますが、加害者家族は、行き過ぎた“制裁”にひたすら耐えるか、逃げ回るしかなく、人権問題と認識されることもありません。日本は犯罪発生率が低いこともあって、欧米に比べ加害者家族に対する視線は厳しいものがあると著者は述べていますが、加害者家族に手を差し伸べることには抵抗感・違和感を持つ人は多いでしょう。

そんな中で、著者が加害者家族の支援に乗り出したのは画期的なことですが、被害者感情からすると「何でそんなことをするのか」と批判されることは想像に難くありません。本書の中でも活動の苦労や困難が語られていますが、悲劇がさらなる悲劇を生んではいけないという強い思いで、それを乗り越えていく姿には頭が下がりました。
もっとも、活動の輪が広がり、救われる人が一人でも増えるに越したことはないのでしょうが、こういう活動をしなくてもいい社会をつくっていくことが何より必要なことに違いありません。

本書を読んで、「罪を憎んで、人を憎まず」という言葉が改めて思い起こされました。

読後感(考えさせられた)