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『「日本の伝統」の正体』を読みました

「日本の伝統」の正体

2018年5冊目の読了は、『「日本の伝統」の正体』(藤井青銅/柏書房 初版2017年12月10日)。書評サイト「HONZ」で紹介されているのを見て、手に取りました。

本書は、「日本の伝統」と言われるものが、いつ、いかにして創られ、日本人はそれをどのように受け入れてきたのか、「季節」、「家庭」、「江戸・京都」、「国家・民族」、「神社仏閣・祭り・郷土芸能」、「外国との関係」の6つのジャンルに分けて、様々な事柄について検証したものです。タイトルと装幀を見ると思想系の本のようですが、内容は雑学系で気軽に読めます。

「初詣」の歴史はまだ120年くらいしかなく、鉄道会社の営業戦略がきっかけだったこと、鰻は冬の方がうまいのに日本人は夏の「土用の丑の日」に有り難がって食べ続けていること、「恵方巻」はコンビニの力があって全国展開できたこと、「神前結婚式」は古式ゆかしくないこと、「肉じゃが」の名前が広まったのは1970年代以降であること、京都の「平安神宮」は創建されて120年くらいしか経っていないこと、「東洋」とはそもそも日本を指す言葉であることなど、とにかく初めて知った話や面白い話の連続で楽しく読んだのですが、個人的には「卵かけごはん」が一般的になったのは昭和30年代以降というのが、一番関心を覚えました。

 本書を読むと、「伝統」の始まりは意外とアバウトなこと、また今「伝統」だと思われていることの多くは、明治期以降に生まれていることがわかります。(本書の最後に「伝統の長さ」という棒グラフがあって一目瞭然です。)だからといって、大切に受け継いできたものを蔑ろにするのはあまり感心しませんが、「伝統」をことさら強調することに対しては、冷静な目を持つことも必要だと思いました。

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(「日本の伝統」の正体 P224 P225)

伝統として受けとめるかどうかは、その時代に生きている人が考えることであり、今「伝統」だと思われていることが、未来永劫「伝統」であり続けることはありません。またこれからも、いろいろな思惑で新しい「伝統」が作られていくことでしょう。

著者は、「バレンタインデー」の話の中で、20年から30年サイクルで外国由来の伝統行事が盛り上がり、移っていくとして、クリスマス(1950年~60年年代)→バレンタインデー(1970年~80年代)→ハローウイン(1990年~2000年代)の次は、イースターが控えていると言っています。本当にそうなるのか、この目で確かめたいところです。

読後感(面白かった)