えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『新聞社崩壊』を読みました

新聞社崩壊 (新潮新書)

今年19冊目の読了は、『新聞社崩壊』(畑尾一知/新潮新書 初版2018年2月20日)。書店で目にして、手に取りました。

本書は、朝日新聞東京本社で販売管理部長を務めた著者が、新聞購読の現状、新聞販売(新聞販売店)の実態、また著者独自の指標を使った新聞各社の経営状況の分析などを通して、新聞社・新聞業界が直面している厳しい状況を明らかにし、独自の視点から新聞社が復活するための方策を示したものです。

本書を読み始めてまず驚いたのが、NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」の結果です。朝夕の通勤電車で新聞を広げている人がめっきり減って、皆スマホばかり見ていること、また新聞を広げると健康食品、旅行、通販、書籍といった広告ばかりが目につくことから、新聞購読者の減少や若い人の新聞離れは十分予想できることですが、まさかここまでとは思ってもいませんでした。

とりわけ2015年の調査で、10代から30代のほとんどの人が、50代でも半数の人が新聞を読んでいないというデータは、「大人になれば新聞を読むのが当たり前」と思っていた者からするとまさに衝撃的でした。もっともテレビやインターネットなどタダの情報があふれている中、それでも国民の三分の一が購読しているというのは、ある意味すごいことかもしれません。
ただし、このままでは減っていくばかり。タイトルの『新聞社崩壊』は決してオーバーな表現ではないはずです。

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(P16)

本書では、この後、新聞販売のあらまし、「北海タイムス」を例にした実際の新聞社崩壊の様子、発行部数10万部以上の新聞社43社の経営評価、新聞業界のタブー「残紙」について、と話が進んでいきます。

新聞販売店と新聞社の関係、表に出てこない新聞社社員の姿、朝日と読売の違い、毎日の凋落原因、残紙・押し紙の深層など、業界の人ならではの話はとても興味深く、また著者の経営評価(ざっくりしたものですが)をもとにした新聞社の勝ち組、負け組の色分けも、インパクトがありました。

著者は本書の最後で、紙の新聞がなくなった場合の問題点をあげ、そうならないためには新たなビジネスモデルを構築しなければならないとし、そのための7つの方策―値下げ、夕刊廃止、紙面のコンパクト化、顧客の集中化管理、流通の合理化、人件費の抑制、販売店の多角経営化―をあげてそのポイントを説明しています。
これらの方策で新しいビジネスモデルができるのか、部外者にとっては判断がつきませんが、とにかく「何か手を打たなければもっと大変なことになる」というのは間違いないでしょう。

本書を読みながら、ずっと頭をよぎっていたのは、自分がいる出版業界のことです。出版業界も新聞と同様、再販制度に守られ、独特の流通制度により成り立ってきました。しかし市場の縮小が続く中、従来のビジネスモデルでは立ち行かなくなってきたことが明らかとなり、また人材不足(出版業界を目指す男性が減っていると人事担当者が嘆いていました)など、新聞と同じような問題も起きています。
出版社、取次、書店とも変革を迫られていて、新聞で起きていることは、決して他人事ではありません。

読後感(考えさせられた)