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『貴の乱 日馬富士暴行事件の真相と日本相撲協会の「権力闘争」』を読みました

貴の乱 日馬富士暴行事件の真相と日本相撲協会の「権力闘争」

2018年20冊目の読了は、『貴の乱 日馬富士暴行事件の真相と日本相撲協会の「権力闘争」』(鵜飼克郎・岡田晃房・別冊宝島特別取材班/宝島社 初版2018年3月8日)。書店で目にして、手に取りました。

昨年秋に起きた元横綱日馬富士の暴行事件から、今年2月にあった日本相撲協会の理事選で貴乃花親方が落選するまで、協会と貴乃花親方のバトルは世間の注目を集め、TVのワイドショーの恰好のネタになりました。今は話題になることもほとんどなく、何事もなかったかのようです。

本書は、2015年11月に北の湖前理事長が急逝した後に開かれた日本相撲協会理事会の議事録、裁判にまで発展している協会と「元相撲協会顧問」「元ベテラン女性職員」とのトラブル、2月の理事選の内幕、日馬富士暴行事件の真相などを示して、協会と貴乃花親方の問題を発端として表面化してきた協会内部の対立は、よく言われる改革派「貴乃花」対守旧派「相撲協会」というような単純なものではなく、長年にわたる協会内部の権力闘争の延長にあることを明らかにしようとしたものです。

本書で公開されている理事会での敵味方に分かれての議論は、利害の鋭い対立を白日のもとに晒しています。そして協会の運営をめぐる様々な疑惑、モンゴル力士会の存在、長年の懸案である「年寄株」の問題など、普段は表に出てこない生々しい話には驚くばかり。また、日馬富士の暴行事件の顛末を描いた劇画『モンゴル・コネクション 鳥取の惨劇』はリアリティがあり、自分も現場にいて事件を目撃しているようでした。

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(P161「モンゴル・コネクション 鳥取の惨劇」 作・画/原田久仁信)

とにかく本書を読むと、複雑で根深い問題に相撲協会が取り囲まれていることがよくわかりますが、本書は「元協会顧問」と貴乃花親方との関係を問題視していて、貴乃花親方には批判的。そのためどうしても協会寄りの印象が残るので、貴乃花支持派としては面白くないかもしれません。ただどちらにしても、私たちの知らないところで、親方たちによる「権力」のすさまじい争奪戦が繰り広げられていることは間違いなさそうです。

日本相撲協会は2014年に公益財団法人に移行しました。ところが、いくら外見が変わっても、「親方」「年寄株」「部屋」「一門」など連綿と続く相撲界独特の制度はそのままです。暴行事件でも協会のガバナンスと貴乃花親方の理事としての責任が強く問われましたが、公益法人になったからといって、親方や力士の意識がすぐに変わることはないでしょう。

しかし今回の事件を機に、協会を見る目はさらに厳しいものになりました。身を切る改革は待ったなしの気がします。貴乃花親方と協会、最終的にどちらに軍配があがるかわかりませんが、いずれにしても、自分たちの損得勘定ではなく、大相撲のファンのために、改革を進めて欲しいと思います。

このブログを書いている最中に、日馬富士事件を巡る協会の対応に問題があったとして、貴乃花親方が内閣府に告発したとのニュースが飛び込んできました。激しい争いはまだまだ続きそうです。

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