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『江戸のいちばん長い日 彰義隊始末記』を読みました

江戸のいちばん長い日 彰義隊始末記 (文春新書)

今年33冊目の読了は、『江戸のいちばん長い日 彰義隊始末記』(安藤優一郎/文春新書 初版2018年4月20日)。書店で目にして手に取りました。

今年は明治維新から150年。NHKの大河ドラマが「西郷どん」ということで、それぞれ関連する書籍も数多く出版されています。本書は歴史学者である著者が、薩長を中心とした新政府に逆らったがゆえに、明治維新の表舞台には出てこない「彰義隊」をとりあげて、その歴史的な意義を明らかにしたものです。

明治維新における江戸をめぐる幕府と新政府の攻防は、「江戸城は勝海舟と西郷隆盛の話し合いで無血開城され、一部の不満分子が彰義隊を結成して上野の山で新政府と戦った。」といった話で済まされることがほとんどです。私自身もその程度の認識しかなく、彰義隊の戦いは、時代に取り残された者たちの最後のあがきといった印象でした。

ところが本書では、徳川慶喜の朝敵への転落から始まる彰義隊結成の経緯、勝海舟と西郷隆盛の交渉の真相、江戸市民と新政府との関係、彰義隊と新政府軍の戦闘の様子、その後の彰義隊士や幕臣たちの姿などが詳しく描かれていて、ありきたりの認識は一変させられてしまいます。

特に、勝海舟と西郷隆盛の交渉で決まったのは「江戸城総攻撃の中止」ではなく「一時中止、延期」であったこと、新政府において西郷隆盛はこの頃から孤立感があったこと、徳川家と江戸城の取扱いについて新政府内で意見が分かれていたこと、彰義隊の戦い方が少し違っていたら江戸は火の海となり、江戸市民に大きな被害をもたらした可能性があったこと、彰義隊の戦いが戊辰戦争に大きな影響を及ぼしたことなど、初めて知る事実は驚きでもあり、興味は尽きませんでした。

また、新政府に対する江戸市民の反発が強いため、新政府は酒を振る舞ったりして人心を掌握しようとしたことや、慶喜の駿河移封に従った幕臣たちの生活苦の様子、その幕臣たちが苦労して開墾した牧の原台地が茶畑となり、その後有数の茶の産地となったことなど、歴史の教科書には登場することがなさそうなエピソードも印象に残り、歴史の面白さを実感しました。

本書を読むと、私たちが知っている(習った)歴史というのは全体のほんの一部分であり、光と影なら光の部分しか見ていないということ、また必ずしも事実通りではないことに改めて気づかされます。

歴史の片隅に追いやられてしまった彰義隊ですが、もっと光が当たってもいいはずだと、心底思いました。

読後感(面白かった)