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『明治維新とは何だったのか 世界史から考える』を読みました

明治維新とは何だったのか  世界史から考える

2018年34冊目の読了は、『明治維新とは何だったのか 世界史から考える』(半藤一利 出口治明/祥伝社 初版平成30年5月10日)。本書は半藤さんと出口さんの対談です。対談形式の本はあまり読まないのですが、お二人の対談ということですぐに手に取りました。

本書では、ペリー来航から始まる幕末期の日本の実情、明治維新の本質と後世の日本に与えた影響、そして明治維新に関係する人たちの人物評などについて、お二人が存分に語っています。

半藤さんと出口さんの対談なら間違いないと思っていましたが、まさに期待に違わぬ内容。半藤さんの自由闊達な語り口と出口さんの鋭い指摘、掛け合い漫才のようにテンポよく話は進んでいきますが、お二人が示す深い見識には感心するばかりでした。

本書で印象に残ったのは、お二人とも江戸幕府の老中であった阿部正弘を高く評価していること。阿部正弘については、教科書で習った安政の改革を行ったことや日米和親条約を締結した程度の知識しかありませんでした。

出口さんは「明治維新における最大の功労者は阿部正弘で、阿部正弘の描いたグランドデザインを実現した大久保利通が二番目の功労者だ」と語っていて、認識を新たにしたのですが、本書で明らかにされている阿部正弘の功績を見ると、幕府側は守旧的、新政府は開明的といったイメージがいかに根拠のないものか、改めて気づかされます。

また第三章で繰り広げられる、幕末に活躍した人物のお二人ならではの人物評も興味深いものがありました。西郷隆盛は毛沢東、大久保利通は鄧小平、伊藤博文は周恩来といったように中国の指導者になぞらえるのは面白く(若い人にはぴんとこないかもしれませんが)、吉田松陰が伊藤博文や山縣有朋の権威づけに利用されたといった話も、なるほどと思わせます。

半藤さんは本書でも、「大日本帝国は薩長がつくり、薩長が滅ぼした」と言っています。本書では、大正10年までの陸軍中将・少将の昇進数や日清・日露戦争で活躍し大将になった人が掲載されていますが、それを見ると薩長出身者の突出ぶりがよくわかります。薩長の人たちが軍国主義の下地をつくり、日清・日露戦争に勝ち、軍の首脳としてその後の日本をリードし、昭和になって無謀な戦争に追い込んだという半藤さんの主張は決して突飛なものとはいえないでしょう。

戊辰戦争やその後の政治の動きを見ると、明治維新の本質は関ヶ原の恨みを晴らし、徳川家を滅ぼすことだけが目的で、その後のことはあまり深く考えていなかったと言いっても過言でないかもしれません。一方太平洋戦争も、最初の勢いに乗ってやみくもに戦線を拡大していったものの、どのように収めるのかについては十分に考えられていたとは言えず、二つの出来事は二重写しのように見えてきます。

「明治維新があったからこそ日本は文明が進んだ」とはよく言われることです。確かに日本が大きく変わるきっかけになったことは間違いありません。しかし本書を読んで頭に浮かんできたのは、たとえ江戸幕府が続いたとしても、日本は文明化の道を進んだだろうということと、そうなった場合、維新という美名のもとに隠された“不都合な事実”は生まれなかっただろうということ。

また歴史というのは、見方を変えればまったく違った姿が浮かび上がってくることや、まだまだ知らないことがことがたくさんあることを、今更ながら実感しました。

読後感(面白かった)