えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『不便ですてきな江戸の町』を読みました

不便ですてきな江戸の町

今年36冊目の読了は、『不便ですてきな江戸の町』(永井義男/柏書房 初版2018年5月5日)。書店のホームページで知って手に取りました。

タイトルだけではわかりませんが、本書は、元大学教授でカルチャースクールの古文書解読講座を担当する講師(会沢竜真)とその受講生の出版社社員(島辺国広)が、江戸文政年間にタイムスリップして江戸の暮らしを経験するという空想小説。本書の読者は、この二人とともに江戸の暮らしを疑似体験するという趣向です。

会沢と島辺は、長崎で修業した蘭方医とその弟子を装い、姿・身なりを江戸時代にふさわしいもの(剃髪、和服、ふんどし、白足袋・草履)に整え、コインショップで古銭を、そして用心のためにドラッグストアで胃腸薬、目薬などを買い求め、江戸時代へ旅立ちます。

そして時空を飛び越えてたどり着いた江戸では、旅籠に泊まり、長屋で暮らしながら、蕎麦や寿司を食べ、銭湯にはいり、吉原や江戸時代のストリップショーを見物し、アダルトショップにも立ち寄るなど、様々なことを体験。長屋で臨時の診療所を開いたり、侍との喧嘩騒ぎに巻き込まれたり、大奥の奥女中にも会ったりと、面白可笑しい出来事にも遭遇します。

あくまで架空の物語ですが、描かれている江戸の暮らしや街の様子は史実そのもの。浮世絵などの図版をもとした解説もあるので、読んでいてとにかく楽しく、自分もあっという間に、会沢と島辺と一緒に江戸時代に引きずりこまれてしまいました。

著者は、「江戸は貧しく、不便で、不潔。身分制や諸制度も過酷で、江戸の町で一週間生活したら幻滅し落胆することも多い。けれど江戸はそれを上まわる魅力に満ちている」と語っています。

確かに、お歯黒をした女たち、あまり旨そうではない蕎麦や寿司、湯が濁っている銭湯、無防備で臭いトイレ、危ない生水、井戸・便所・ゴミ捨て場が近接し異臭を放っている裏長屋。本書で描かれている江戸の姿は、テレビの時代劇のイメージとは随分違います。現代の日本人が江戸時代で生きていくことは難しいでしょう。

しかし本書を読んで、江戸の暮らしに興味は増すばかり。会沢と島辺のようにはいきませんが、せめて夢の中でもいいので、江戸時代に行ってみたいとつくづく思います。

読後感(面白かった)