えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『鉄道快適化物語 苦痛から快楽へ』を読みました

鉄道快適化物語: 苦痛から快楽へ

今年79冊目の読了は、『鉄道快適化物語 苦痛から快楽へ』(著 小島英俊/創元社 初版2018年9月20日)です。新聞書評で本書のことを知り、買い求めました。“鉄道マニア”ではないのですが、鉄道の話にはなぜか興味が引かれてしまいます。

本書は、日本の鉄道が進化してきた歩みを、“快適性の向上”という点に着目して辿るもの。鉄道に造詣が深い著者が、「混雑」(車体・座席スペース)、「客室」(構造と種類)、「乗り心地」(軋み・騒音・振動)、「車内設備」(座席・照明・冷暖房・トイレ)、「サービス」(接客・マナー・座席指定)、「速達性」(高速化と直通化)が改善されてきた過程、等級制の変遷や電化のあゆみ、また快適性の基盤である安全性向上の取り組みについて語り、さらに豪華列車や今話題のクルーズ列車にも話が及んでいきます。

 “難行苦行”だったともいえる列車の旅。それが多くの人の地道な努力と工夫により、次第に快適かつスピーディーなものになっていく様子が、よくわかったのですが、本書は技術的な話や専門的な話に終始しているわけでありません。

昔は列車にトイレがないため出発前か停車中に用を済ませるしかなく、途中駅で取り残される乗客もいた。碓井峠のトンネルには蒸気機関車の煤煙を防ぐ「排煙幕」が設置され「隧道番」と呼ばれる作業員が幕の上げ下ろしをしていた。上野~郡山~会津若松~新潟間を東北線・磐越西線・信越線経由で走った直通列車があった。といった面白いエピソードがふんだんに登場。

珍しい写真や図版、資料もたくさん掲載され、また、田山花袋の『蒲団』、三島由紀夫の『春の雪』、夏目漱石の『三四郎』といった小説で描かれた鉄道に関係する印象的な場面や、昔の新聞記事の紹介などもあって,鉄道マニアならずとも、楽しく読むことができました。

本書を読みながら、頭に浮かんできたのは、鉄道にまつわる昔の記憶。小学生の頃、父親が急行電車(「佐渡」だったと思います)のビュッフェに連れて行ってくれたこと。学生時代、特急「とき」で4時間かけて上京していたこと。下宿の最寄り駅だった中央線荻窪駅で、冷房がついた「特快」が通過するのを羨ましく見ていたこと。東北新幹線はまだ開通していない頃、上野駅始発のブルートレインに乗って青森、秋田、岩手へよく出張していたこと。関西に住んでいた頃、幼い子供たちをブルートレイン「つるぎ」に乗せて帰省したこと。どれも懐かしい思い出です

鉄道は人生を乗せて走っているのかもしれません。

読後感(面白かった)