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『老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの』を読みました

老いと記憶-加齢で得るもの、失うもの (中公新書)

2019年3冊目の読書レポートは、『老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの』(著 増本康平/中公新書 初版2018年12月25日)です。書店で目にして手に取りました。

最近、人の名前が出てこないのは日常茶飯事。年齢には逆らえません。「認知症」という言葉も他人事ではなくなってきました。

本書は、高齢者心理学、認知心理学の専門家である著者が、国内外の様々な実験データや研究成果を示しながら、加齢と記憶の関係を解き明かしたもの。

「衰える記憶」と「衰えない記憶」の違い、「衰える記憶」への対処方法、記憶機能の訓練の効能、認知症予防と認知機能の改善策、そして高齢期における記憶の役割といったテーマに従って、図版やグラフなども使いながらわかりやすく説明されています。

本書によれば、加齢とともに衰える記憶機能は、複雑な思考や並列的な作業を担う記憶である「ワーキングメモリ」と過去の出来事の記憶である「エピソード記憶」の二つ。

確かに、電気製品やパソコンなどの初期設定が億劫に感じられたり、昔のことがなかなか思い出せなくなったりすることが、以前に比べ多くなった気がします。

一方、「脳トレ」といった認知訓練は、それなりにメリットもあるものの、認知機能の改善や認知症の予防に効果があるという根拠は乏しいとのこと。認知機能の衰えが高齢者の幸福感や精神的健康に悪影響を及ぼすわけではないとはいえ、残念ながら、機能の衰えは、“自然現象”として受け入れるしかありません。

もっとも、だからといって何もしないで年を重ねるのは考えものです。

「人生をつうじて獲得した知識は蓄積され続け、年を取っても忘れず、知恵の基盤になる」、「習慣は良くも悪くも高齢になっても維持される」(だからいい習慣を身につけることが大切)、「興味や関心は記憶成績を高め、老いへの偏見、気分の落ち込みは記憶機能に悪影響を及ぼす」、「生活習慣病は認知症の危険因子である一方、豊富な社会的交流、適度な運動、魚やビタミンC・Eの摂取などは認知症を予防する生活習慣」といった話は、大いに参考になるものでした。

また、「人生の受容や人生の幸福において重視される記憶は“後悔”であり、後悔を解消することが高齢期の精神的な健康状態の維持に重要である」、そして「年老いても成長し続けるためのやる気と努力を失わなければ、たとえやり直しのきかない後悔があったとしても、その後悔から得た教訓や後悔の意味を見出すことで、それらの経験が無駄ではなかったと思うことができる」という指摘は、これからの生き方を考えさせてくれます。

著者は、一日3時間の訓練を10年間続ければ(1万時間になります)、その分野のエキスパートになる可能性があると言っています。60歳から始めたことでも、70歳には形にはなるということ。エキスパートにならずとも、やろうと思ってできなかったことにチャレンジしてみようという気になります。

それで少しでも“後悔”を減らせたら、自分の人生も違ったものになるかもしれません。