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『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけたつまらなくない未来』を読みました

ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来

2019年5冊目の読書レポートは、『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけたつまらなくない未来』(著 小島健志/監修 孫泰蔵/ダイヤモンド社 初版2018年12月19日)です。書評サイト『HONZ』で知って手に取りました。

本書によれば、バルト3国のひとつであるエストニアの人口は130万人で福岡市とほぼ同じ。面積は九州7県と同程度しかありません。ところが、そんな小さな国がIT立国を掲げ、「電子政府」を実現したことにより、今世界から注目を集めているのだそうです。

本書は、ダイヤモンド社の編集者である著者がそのエストニアを現地取材し、デジタル国家の姿を伝えるもの。「政府のデジタル化」、「国民のデジタル化」、「産業のデジタル化」、「教育のデジタル化」の4つのテーマに分け、エストニアの「未来を先取りする革新的な取り組み」をわかりやすく紹介し、あわせて未来に対して悲観的な話しか出てこない日本が、この小さな国から何を学ぶべきか考えていきます。

本書で紹介されていることは、とにかく驚くことばかりです。

「子どもが誕生してから10分後には政府からお祝いのメールが届き、国民ID番号が付与される」、「行政手続の99%をオンラインで済ませることができる」、「分散型のデータ交換基盤システム[X-road]に官民のデータベースをつなげる」、「外国人を仮想住民として認め、仮想居住権を与える」(e-Residency:イーレジデンシー制度)、「学校では8歳からロボット開発の授業が必修科目」、「子どもの成績、出欠・宿題の状況、時間割などがオンライン上で確認できるシステムがあり、親も無料で使える」。

日本では考えられないことばかりですが、「領土が奪われて、国民が散り散りになったとしても、国民・国家のデータさえあれば再建できる」という考え方は、思いもよらないものでした。

様々なコストが削減され、国民の利便性が高まり、多様な人材を世界中から集め、起業家を生み出すエコシステム出来上がり、学習機会の平等化をもたらす。国の歴史も浅く(建国して100年)、小国であるがゆえに電子化を進めざるを得なかった、あるいは小国だからこそ可能だったとしても、その“成果”には目を見張るものがあります。

本書には出てこない課題もあるのでしょうが、次々に打ち出される新しい取り組みが、エストニアの将来を悲観的なものにしていないことは確かです。

「透明性を確保するのは民主主義国家としての義務である」、「取り組みのすべては顧客(国民と企業)が主導する」、「次の100年でも人権を守り、民主的な社会を発展させていくことが重要であり、そのためにもテクノロジーの変化に適応しなければならない」。カリユライド大統領(エストニア史上初の女性大統領)の言葉も強く印象に残りました。

それにつけても、本書を読んで考えるのは、日本の現状と将来です。鳴り物入りでスタートしたマイナンバー制度は浸透せず、データを平気で隠蔽・改竄する政府への信頼感は乏しく、行政の仕組みは硬直化し、学校教育は画一的なまま。少子高齢化が進み、大きな経済成長は望めず、社会には閉塞感らしきものが漂っています。

もちろん、“電子化”がすべてを解決するとは思えません。しかし、これから到来する世界を想像し、それにふさわしい国家のありかた、必要とされる産業や教育を考え、そこに最新のテクノロジーを取り入れる。エストニアにできて、日本にできないことではないでしょう。

ただそのためには、著者が語るように、国も組織も個人も、まず昭和・平成時代の「かきがら」(蠣殻=固定観念)を取り払うことが不可欠。本書の監修者である孫泰蔵氏は、時代が大きな転換を迎えた中、「自分の中に巣くう惰性、成功体験、常識をアンラーンしてまっさら状態で新しく学ぶべき」と説いています。

つまらなくない未来にするために、今の日本が真っ先にしなければいけないのは、それに尽きるかもしれません。