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『縄文時代の歴史』を読みました

縄文時代の歴史 (講談社現代新書)

2019年6冊目の読書レポートは、『縄文時代の歴史』(著 山田康弘/講談社現代新書 初版2019年1月20日)です。書店で目にして手に取りました。

縄文時代といっても、歴史の授業で教わった記憶は薄れ、思い浮かぶのは「縄文土器」、「土偶」、「貝塚」、「竪穴式住居」といった断片的なことばかり。それでも、はるか昔、日本に住んでいた人たちは一体どんな生活をしていたのか、興味は尽きません。

本書は、国立歴史民俗博物館教授で先史学者の著者が、今から1万6千年以上前(諸説あるようですが)に始まった縄文時代の姿を叙述したもの。

縄文時代を学問的な区分に従い、草創期、早期、前期、中期、後記、晩期と追いながら、それぞれの時期において繰り広げられた縄文人たちの生活や社会の様子、そして精神文化について、近年の調査・研究の成果なども踏まえて詳しく解説されています。

本書を読んで今更ながら気づいたのは、縄文時代が1万年以上も続いていたこと。よく考えればわかることですが、そんな長い間時間の中で、縄文人が最初から最後まで皆同じような生活をするはずはありません。本書では縄文時代の多様な世界が解き明かされています。

気候変動の影響で変動する居住地。時代・地域によって異なる、居住形態、集落の構成、住居の構造、婚姻形態(夫方居住婚・妻方居住婚)、食べ物、埋葬方法などの生活スタイル。時代とともに拡大し、発達する集落間・地域間のネットワークと交易。縄文威信財といわれる装身具・呪術具を身に着ける「特別な人物」の登場によって推察される社会の階層化。今につながる祖霊崇拝思想の成立。

「縄文時代は狩猟、漁労、採取を中心とした平等な社会」というよく目にする説明は、あまりに大雑把であることを思い知らされました。

本書で興味深かったのは、やはり縄文人の生活の様子です。土器を様々な用途で使う(製塩までしていました)。クリの木を長期間管理し、建築材に使ったり、実を加工して(縄文クッキー)食べたりする。軸組工法で大きな建物を作る。多大な時間と労力をかけて漆製品を製作する。

想像以上に“文明的”な暮らしで驚きましたが、今の私たちとの強いつながりをはっきり感じさせるものです。

それにしても、遺跡や遺骨、埋蔵物から1万年以上前の時代を割り出し、そこから考えを巡らし、その時代の姿・形を推し測る。まるで推理小説の謎解きのようですが、「考古学って凄いなあ」と素直に感心してしまいます。

著者によれば、本書は通りいっぺんの初心者向け入門書ではなく、学術的にもそれなりのレベルを確保した内容だそうです。

確かに初心者の私にとっては、“専門的”と感じるところもありましたが、写真や図版もたくさん掲載されていて、縄文の世界を十分楽しむことができました。