えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『生き残る判断 生き残れない行動 災害・テロ・事故、極限状況下で心と体に何が起こるのか』を読みました

生き残る判断生き残れない行動 (ちくま文庫)

2019年9冊目の読書レポートは、『生き残る判断 生き残れない行動 災害・テロ・事故、極限状況下で心と体に何が起こるのか』(著 アマンダ・リプリー/訳 岡 真知子/ちくま文庫 初版2019年1月10日)。2009年に光文社から刊行された単行本の文庫版です。書店で目にして手に取りました。

平成の時代、日本は地震、豪雨、火山の噴火、大きな自然災害に翻弄されました。昨年9月に来襲した台風24号は、近くの小金井公園の巨木を倒し、私の家でも庭のコニファーが危うく倒れそうに。災害が他人事でないことを実感させられました。

本書は、自然災害、テロ、飛行機事故、大規模火災といった想像を絶する事態に遭遇したときに、心や体はどのように反応し、人はどのように行動するのか。大惨事を生き延びた人の証言、専門的な知見、そして著者自身の体験した訓練などから明らかにし、危機に直面したとき私たちはどう対処すべきか示したものです。

本書では、世界貿易センター爆破事件(1993年)、ハリケーン「カトリーナ」(2005年)、ドミニカ共和国大使館占拠事件(1980年)、ビバリーヒルズ・サパー・クラブの火災(1977年)、ヴァージニア工科大学銃乱射事件(2007年)、エア・フロリダ90便墜落事故(1982年)、そして9.11アメリカ同時多発テロ事件(2001年)などを取り上げ、生存者や目撃者の生々しい証言が紹介されています。

どのエピソードも臨場感にあふれ、衝撃的。それだけでもドラマがあり読み応えがあったのですが、そこから導かれる教訓は、強く心に残るものでした。

本書によると、人は危機的状況に陥ると、時間の経過とともに、「否認」、「思考」、「決定的瞬間」のプロセスをたどるそうです。

「否認」とは、我が身に起こっている危機的な状況を認めようとしないこと。それが行動の遅れにつながり、また意味のない行動に走らせ、命の危険を招くことになります。

次に「思考」の段階では、現実を受け入れた途端、平時と異なった考え方や受け取り方をしてしまい、恐怖に襲われ、パニックに陥ります。しかし、そこで回復力を発揮し、あるいは集団思考により危機を逃れる人もいます。

そして、「決定的瞬間」では、多くの人が、目も耳も心も閉ざしてしまいがち(麻痺状態)になる一方で、見知らぬ人を救おうとする英雄も現れます。

もっとも、このように心と体に何が起きるかわかっていたとしても、身の危険を感じる場面でどこまで冷静でいられるか自信はありません。自分ではどうにもできないこともあるに違いなく、襲い来る災害や突然の事件・事故すべてに完璧に対応することなど不可能でしょう。

しかし、たとえそうであったとしても、心や体の反応に惑わされず(いざというとき深呼吸は大事です)、早く「否認の段階」を通り抜ける。古くからの言い伝えなどを疎かにしない。孤独にならない。そして準備を怠らない(不慣れな場所で出口を確認すること、飛行機に備えつけの“安全のしおり”を読むことなどはとても大事です)。これから心がけようと言い聞かせました。

本書では、ある警備主任のエピソードが紹介されています。彼は、世界貿易センターにオフィスを構えていたモルガン・スタンレー社で働き、周囲から何と言われようとも、抜き打ちの避難訓練を頻繁に実施したそうです。その甲斐もあって、9.11の際には2700名近い社員の命が救われたのですが、本人は逃げ遅れた社員の救出に向かったまま、帰らぬ人になりました。

私のオフィスでも、定期的に避難訓練が行われます。ただ、これまでは何となく参加し、非常階段を上から下まで黙々と降りるだけ。「もっと真剣にやらなければ」今、反省しきりです。