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『友情について 僕と豊島昭彦君の44年』を読みました

友情について 僕と豊島昭彦君の44年

今年25冊目の読書レポートは、『友情について 僕と豊島昭彦君の44年』(著 佐藤優/講談社 初版2019年4月22日)。書店で目にして手に取りました。

本書の著者は、作家で元外交官の佐藤優氏。タイトルにある豊島昭彦氏は、佐藤氏の高校時代(埼玉県立浦和高校)の同級生であり、親友です。

佐藤氏が本書を執筆したきっかけは、高校の同窓会で40年ぶりに再会した豊島氏がステージ4の膵臓がんであると知ったこと。佐藤氏は、「自分がこの世に生きた証を遺したい」という豊島氏の願いを叶えるため、豊島氏の人生を振り返る本を出版することを提案。豊島氏がそれを受け入れ、本書が刊行されることになりました。

佐藤氏は、豊島氏の手記と自ら行った豊島氏へのインタビューをもとに、豊島氏の半生を克明に綴り、また折々に、同じ頃の自身の動向についても言及しています。

小学生の頃から優秀な学業成績。高校での佐藤氏との出会いと生まれた友情。一橋大学卒業後、希望する日本債券信用銀行(日債銀)への就職。銀行員としてのキャリアを順調に歩んでいる中での日債銀の経営破綻。外資系ファンドの買収により混乱が続く日々と外国人上司との軋轢。不当な評価がきっかけとなったゆうちょ銀行への転職。異文化に戸惑い、プライドと自信が崩れかけていくゆうちょ銀行での仕事。理不尽な人事異動に我慢ならず、定年を間近にして二度目の転職。新しい職場でがんばろうと思っていた矢先の突然のがん宣告。

人生は山あり谷あり。サラリーマンに運・不運はつきものですが、それでも順調だった銀行員としての人生が一転、豊島氏を次々に襲う試練は相当なもの。私だったらとても耐えきれなかったでしょう。

しかし、豊島氏はそんな苦境の中でも、部下や仲間のことを思いながら、困難を懸命に乗り越えようとします。その姿には感服するばかりでしたが、本書から滲み出る豊島氏の誠実な人柄も強く心に残りました。

政治家でも、経営者でも、芸術家でもない、一人のサラリーマンの半生。それだけに多くの人にとって、勇気となり、励みとなり、教えられることがたくさんあるに違いありません。

ところで佐藤氏は、「カイロス(ある出来事が起きる前と後では、事柄の質が変わるような時間のこと)を共有する者は、どれだけ時間が経過しても、すぐに濃密な関係を持っていたときと同じ状況に還ることができる」。「親友とは付き合った時間よりも相互理解の深さで測られるものだ」と語っています。

豊島氏と佐藤氏はまさしくカイロスを共有し、40年以上合わなくても友情は不変。そんな二人の関係は、羨ましくもありますが、人生にとって何が大切なのか、改めて考えさせられるものとなりました。

いよいよこれからというときのガン宣告。豊島氏の受けた衝撃は察するに余りありますが、気持ちを切らさず、何とか頑張ってほしいと願うばかりです。