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『新宿の迷宮を歩く 300年の歴史探検』を読みました

新宿の迷宮を歩く: 300年の歴史探検 (平凡社新書)

2019年30冊目の読書レポートは、『新宿の迷宮を歩く 300年の歴史探検』(著 橋口敏男/平凡社新書 初版2019年5月15日)。書店で目にして手に取りました。

もうかなり昔、上京して下宿先の荻窪に向かう途中、中央線の車窓から見える西新宿の高層ビルに“東京”を実感しました。

それ以来、東京の繁華街のなかで新宿は身近な存在。
学生時代は、映画を見たり、トースト食べ放題の喫茶店で駄弁ったり、歌舞伎町の雀荘で麻雀をしたり、三丁目の焼鳥屋で大騒ぎしたり…。悪友たちとの思い出は尽きません。

そして今、新宿はもっぱら買い物の街。定期券という恩恵があることもあり、紀伊國屋書店にはしょっちゅう立ち寄り、ヨドバシカメラや東急ハンズにもよく行きます。

本書は、新宿歴史博物館の館長である著者の案内で、新宿の歴史を通して、巨大繁華街新宿の姿と魅力に迫るもの。

新宿駅と周辺の街並みや暮らし、新宿のルーツである内藤新宿、東京を代表する繁華街「歌舞伎町」、芸術家や文化人たちと新宿との関わり、新宿御苑と玉川上水、そして浄水場からビジネス街となった新宿駅西口。様々なテーマから新宿の歴史を探訪していきます。

現在は乗降客数世界一の新宿駅も、明治18年(1885年)開業当初の乗降客は1日50人ほど。伊勢丹の建物は新宿のデパート第1号の「ほてい屋」を合体したもの。芥川龍之介の父は新宿二丁目で牧場を開いていた。歌舞伎町は武蔵野の風景が広がっていた。歌舞伎町に児童文学の拠点「赤い鳥社」があった。新宿御苑はマスクメロン発祥の地。新宿駅西口に大規模なタバコ工場があった。

次々に登場するエピソードは初めて知ったことが多く、面白い話ばかり。また「談話室滝沢」、「二幸」、「さくらや」、「コマ劇場前の噴水」、「新宿ミラノ座」など懐かしい名前にも再会し、忘れていた記憶が蘇ってきました。

印象的だったのは、新宿と文化人とのつながり。佐伯祐三、林芙美子、夏目漱石、芥川龍之介、中原中也、永井荷風、内田魯庵、内村鑑三、小泉八雲…。名だたる人たちが新宿で過ごしていたことに驚くとともに、演劇や映画など、新宿は「文化の街」であったことにも改めて気づかされました。

今ではなかなか感じ取れませんが、新宿が“若者文化の発信地”になったのは、必然的なことだったかもしれません。

本書には新宿の街歩きマップが、解説付きで全部で10ルート収録されています。いつも何気に歩いている道にも見所がたくさん。実際に歩いてみて、新宿の魅力をもっと感じたくなりました。