えむと、メモランダム

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『しあわせとお金の距離について』を読みました

しあわせとお金の距離について

2019年32冊目の読書レポートは、『しあわせとお金の距離について』(著 佐藤治彦/晶文社 初版2019年4月30日)。書店で目にして手に取りました。

金融庁が公表した「老後は2000万円が必要」という報告書が波紋を呼び、政治問題化しました。野党はこれを政府追及の材料とし、政府・与党は参院選が近いこともあり、問題になることを避けようとしています。

「ゆとりのある老後には、自助努力で老後資金を準備しなければならない」というのは、かなり以前から言われていること。報告書の内容は大きく騒ぎ立てるようなものではないはずです。

ところが「2000万円足りない」という言葉だけが一人歩きしてしまい、この報告書を作成した関係者は、さぞかし驚き、戸惑っているに違いありません。

本書は、経済評論家でジャーナリストの著者が、「人生をしあわせで心地良いものにするためには、いい距離でお金とつきあい、うまく使いこなすことが必要」だとして、人生100年時代をしあわせに生きるためのヒントを、お金との関係で綴ったエッセイ。

著者自身の経験や生い立ち、ご両親のエピソードを交えながら、人生を不安とともに過ごさないためのお金との向き合い方、しあわせになるためのお金の使い方を考え、さらに終の棲家の持ち方、生命保険の評価、生きがい・趣味の持ち方、副業の始め方、お墓とお葬式のあり方、そして賢い買い物の方法などについても話が及んでいます。

確かに、お金を貯めること、増やすことに関心はあっても、使い方にまで頭は回っていません。まして著者の言う、「苦労して手に入れた大切お金を、しあわせになるために使っているか」など普段考えてもいないこと。

著者の話から、お金を上手に使ってこそ人生は豊かになるという、大事なことに気づかされました。

また本書では、人として敬愛される生き方、しあわせな人間関係の作り方、といった話も出てきます。

日々穏やかに、楽しく生きるためには人間関係も大事です。良好な人間関係のためには、著者が言うように、他人を思いやること、身なり・表情に気を配ること、周囲に配慮すること、相手との“距離”を考えることは大切。それは何も老後だけの話ではありません。

「言うは易し行いは難し」かもしれませんが、少しでも心がけようと思いました。

著者は、夏の暑い日、缶コーヒーやペットボトルのミネラルウォーターを買い置きし、宅配のドライバーや新聞の集金人に「ご苦労様」と言って渡しているそうです。そこまでする人は、なかなかいないでしょう。

報告書騒動との対照で、「お金は自分のためにだけ使わない方がしあわせになれる」という著者の言葉が、強く心に残りました。