えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『人生で大切なことは泥酔に学んだ』を読みました

人生で大切なことは泥酔に学んだ

2019年39冊目の読書レポートは、『人生で大切なことは泥酔に学んだ』(著 栗下直也/左右社 初版2019年6月30日)。書店で目にして手に取りました。

お酒に強い・弱いは、親から受け継いだ体質によるものだそうです。私はお酒に強かった父親の遺伝子をしっかり受け継いでいますが、前後不覚になるような“泥酔”の経験はほとんどありません。(記憶に残っていないだけかもしれませんが)

小さい頃によく見た父親の酔った姿が脳裏に焼き付いているせいか、あるいは二日酔いの苦しさを味わいたくないからか、泥酔する前にブレーキがかかるようです。

本書は「酔人研究家」と称する著者が、そんなつまらない自制心など持ち合わせていない偉人たちの“泥酔”にまつわるエピソードを綴ったもの。作家、俳優、スポーツ、政治家など、歴史に名を残した27人の驚くべき飲みっぷりが紹介されています。

ツケの清算のために用意したお金を使って飲み歩く太宰治。庭で真剣を振り回し、友人宅に銃弾を撃ち込む三船敏郎。アルコール中毒の影響で乗り物恐怖症になり(真偽は定かではありませんが)、その怖さに打ち勝つために酒を飲んだ横溝正史。泥酔して警察に保護された2カ月後に文化功労者に選ばれた河上徹太郎。一升瓶を抱えて駅のホームから落下し、見ず知らずの民家に押し入り「酒を出せ」と叫んだ小林秀雄…。

どれもこれも面白く、あきれる話もふんだんに登場するのですが、ガラスのコップをかじって食べてしまう力道山と、“人間凶器”のようになってしまう囲碁棋士の藤沢秀行氏の話には、さすがに驚いてしまいました。

ただ不思議なのは、酔っぱらって周囲に多大な迷惑をかけているにもかかわらず、どこか憎めない人が多いこと。「ひどいなあ」と思いながらも、「すごいなあ」とか「この人なら仕方ないか」といった気持も湧き上がってきます。

著者によると、本書のコンセプトは「偉人の泥酔ぶりから処世術を学ぼう」なのですが、上手な世渡りのためには、まずは泥酔する前の生身の人間の魅力が大事ということになるのでしょう。

もっとも、私自身は今さら処世術でもありません。本書を読んだ結論は「飲む過ぎに注意しよう」ということになりました。(われながらつまらない結論です)

ところで、本書では著者の泥酔する姿も出てきます。さすがに偉人たちには及びませんが、なかなかなもの。偉人たちの仲間に入る日も近いかもしれません。