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『韓国 内なる分断 葛藤する政治、疲弊する国民』を読みました

韓国 内なる分断: 葛藤する政治、疲弊する国民 (平凡社新書)

2019年50冊目の読書レポートは、『韓国 内なる分断 葛藤する政治、疲弊する国民』(著 池畑修平/平凡社新書 初版2019年7月12日)。書評サイト『HONZ』に掲載された成毛真さんのレビューを読んで、手に取りました。

今、日本と韓国の関係は鋭く対立し、最悪な状態だと言われています。

いわゆる嫌韓本が書店にならび、ヘイトスピーチやそれに類する発言がなされ、メディアがそれを煽る一方で、市民同士の交流が途絶えるといった状況には心が痛みます。

ただそうは言っても、国家間の約束を反故にし、起こった事実を認めようとせず、考えられないような発言が飛び出し、日本製品の不買運動に走る。韓国の振る舞いは、なかなか理解できません。「何で?」と思っている日本人は、私だけではないでしょう。

本書は、NHKの前ソウル支局長が、大韓民国建国以降の韓国政治史を追いながら、韓国国内の政治対立や社会の分断の様相、それが日本に及ぼしている影響などについて解説したもの。

「南南葛藤」と呼ばれる保守派と進歩派の激しい対立と、そのたびに繰り返される政治的・社会的混乱。大統領の持つ絶対的な権力と、その権力を忖度する者や利用しようとする者。

“保守派のジャンヌ・ダルク”朴槿恵大統領の誕生と突然の転落。そして「ロウソク革命」によって誕生し、「積弊精算」を掲げ保守派打倒に執念を燃やす文在寅大統領。

“対立”抜きでは語ることができない韓国政治の実態が、生々しく綴られています。

政党やその支援者同士の対立、トップの交代による人事の刷新、権力者に対する過度な忖度、地域や階層の格差といった問題は、韓国に限らず多くの国で見られるものです。

しかし、本書で明らかにされている韓国における対立の根深さや、それが招く混乱は相当なもの。

政権が替わった途端、前大統領が逮捕され、メディアのトップが解任や辞任に追い込まれ、ニュース番組のキャスターまで一新される。果てはデモ犠牲者の死因まで変わってしまうといった事態は、とても想像できないことです。

また、労働組合や世論の強さが、波乱を引き起こす大きな要因であることも目を引きます。

韓国では、「憲法の上に、『国民情緒法』がある」とまで言われ、世論の強さが司法の判断にも影響を与えるそうです。「本当にそれでいいの?」という気持ちは消えません。

著者によれば、文政権としては、日本との関係を自ら進んで傷つけようと考えているわけではなく、「日本とは未来志向の良好な関係を構築したい」のだそうです。(俄に信じられませんが…。)

政権発足以来、日韓関係が軋み出したのは、「ロウソク革命」に拘泥して保守派政権の実績を全否定しようとするあまり、収拾がつかなくなったからとのこと。

それが事実だとしたら、関係修復に向けてきちんと手を打ってほしいところですが、本書を読む限り、簡単なことではなさそうです。