2020年6冊目の読書レポートは、『「駅の子」の闘い 戦争孤児たちの埋もれてきた戦後史』(著 中村光博/幻冬舎新書/初版2020年1月30日)書店で目にして、手に取りました。
本書は、2018年8月に放送されたNHKスペシャル『″駅の子″の闘い~語り始めた戦争孤児』を再構成し、書籍化したもの。
「駅の子」と呼ばれた戦争孤児たちの証言を通して、戦争で両親を失い、一人で生きていくことを強いられた子どもたちの、悲劇の実態が明らかにされています。
突然奪われたありふれた日常、子供心に感じる強い孤独感と絶望感、親戚縁者から受ける冷たい仕打ち、死と隣り合わせの飢餓、周囲の差別と偏見、そしていじめ…。
そんな、普通の大人でも耐え難い過酷な状況のなかで、何とか生きぬこうと必死でもがく子どもたち。
その一方で、無関心を装い、治安を乱す存在だとして孤児たちを野良犬のように扱い、嫌悪する大人たち。
読んでいてせつなさが胸に迫り、本をめくる手が何度も止まりましたが、“狩り込み”によって捕えられ、鉄格子の部屋に押し込められた子どもたちの写真には大きな衝撃を受けました。
(「駅の子」の闘い P171)
人間として扱われなかった孤児たちの心から、冷たい社会に対する怒りや、受けた屈辱の悔しさが消えないのは、当然のことでしょう。
「食べ物に飢え、着るものもなくて毎日寒かったけど、何よりもほしかったのは″ぬくもり″だった」という言葉が、胸に重く響いてきます。
孤児の一人は、「本当に優しかったら、あの孤児たちが、浮浪児がいたら、そこで何か周りでね、温かい手を差し出しているはずなんだよね、だから、日本人というか、人間は、案外そういう冷たさを持っているんじゃないかと思うけどね」と語っています。
本書では、孤児たちに手を差し伸べる人たちのエピソードも登場しますが、それが美談のように取り上げられること自体、社会の冷たさを物語っているもの。
そしてその冷たさは、孤児が言うように、今も社会の至るところに横たわっていて、人の心の奥底にあるものは、簡単には変わらないものだと気づかされます。
ところで本書によれば、最近は、映画『火垂るの墓』の主人公の兄妹に対し、「自己責任論」を訴える声も大きくなっているのだそうです。
そんな見方があることに、それが受け入れられることに、驚きを覚えてしまいました。