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『日本文化の核心「ジャパン・スタイル」を読み解く』を読みました

日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (講談社現代新書)

2020年13冊目の読書レポートは『日本文化の核心「ジャパン・スタイル」を読み解く』(著 松岡正剛/講談社現代新書/初版2020年3月20日)。書店で目にして手に取りました。

私にとっての松岡氏は何といっても「千夜千冊」。初めてサイトを目にしたときは、びっくりしました。

本書は、松岡氏が“ジャパンフィルター” と名付けた手がかりをもとに、日本文化の核心(=真骨頂、正体)を読み解くもので、いわば松岡流日本文化論(日本論)。

「客神(ゲストの神)」、「米」、「神仏習合」、「仮名」、「家」、「かぶき」、「数奇」、「面影」、「まねび」、「経世済民」といったフィルターを通して、日本文化の奥底にあるものを明らかにしていきます。

松岡氏の話は全部で16話(講)。「柱の文化」、「コメ信仰」、「和の起源」、「学びの本質」、「庭と日本人の経済性」、「粋といなせ」…。

切り口は独特で刺激的。日本文化などには全く疎い私でも、引き込まれてしまったのですが、松岡氏の造詣の深さ、守備範囲の広さ、時代性には舌を巻きました。

面白かった話のひとつが、「ポケモン」と「かぐや姫」、「一寸法師」の関係を取っ掛かりに、「日本的ミニマリズム」について論じた第8講の『小さきもの』。

日本人には「小さいものは美しく、大事なもの」とする感性があること。

それゆえ、日本人は短歌や俳句、盆栽を愛好し、柔道を発達させ、オートバイ、トランジスタラジオ、ウオークマンを開発し、ミニ電卓やポケベルのブームを呼び起こしたこと。

扇子や手ぬぐいなど、小さいものをさまざまに解釈していった才能があり、日本人は小さいものに価値の多様性や変容性を読み取ったこと。

言われてみれば「なるほど」と思うのですが、「小さいものが日本文化の核心」という洞察には畏れ入るばかりです。

そして、仮名文字あっての日本文化という話も強く心に残るもの。
ドナルド・キーン氏は「仮名の出現が日本文化の確立を促した最大の事件だ」と述べたとのことですが、本書でもその意味を知ることができます。

仮名文字が生まれなかったら、日本文化の様相は、今とまったく違ったものになっていたでしょう。

ところで、本書を読んで気がついたのは「日本神話」の面白さ。「日本神話」なくして日本文化は語れないこともよくわかりました。

もっとも、昔と違って今はその内容を教わることもなく、私も知らないも同然。一度きちんと目を通してみようと思っています。