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『はずれ者が進化をつくる  生き物をめぐる個性の秘密』を読みました

はずれ者が進化をつくる ──生き物をめぐる個性の秘密 (ちくまプリマー新書)

2020年23冊目の読書レポートは『はずれ者が進化をつくる  生き物をめぐる個性の秘密』(著 稲垣栄洋/ちくまプリマー新書/初版2020年6月10日)。

昨年読んだ稲垣先生の『生き物の死にざま』(草思社)は心に染みるもので、印象に残る一冊でした。

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 それもあって、本書が目にとまったのですが、「ちくまプリマー新書」は、主に若い世代を対象とした入門書的なレーベル。

年齢はかけ離れていますが、文系人間の私でも、進化について多少なりとも知ることができそうな気がして、買い求めました。

ところが、読み始めてすぐに気がついたのは、本書は単なる生物学の本ではないこと。

確かに生き物の「個性」に着目し、様々なエピソードをもとに、生き物の生存戦略である「進化」についてわかりやすく解説されているのですが、そこには若い世代への稲垣先生のメッセージも綴られていました。

“私たちの性格や特徴に個性があるということは、その個性が人間にとって必要だからです。”

“忘れていけない大切なことは、本当は自然界には序列や優劣はないということなのです。”

“生物の世界は、「違うことに」に価値を見いだしています。「ふつうなもの」「平均的なもの」もありえません。”

“新たな進化をつくり出すのは、常に正規分布のすみっこにいるはずれ者なのです”

“自然界では、違うことに意味があるのです。そこに優劣はありません”

“すべての生物は、ナンバー1になれる自分だけのオンリー1のポジションを持っているのです。すべての生物はナンバー1であり、オンリー1なのです。”

“進化を作り出してきた者は、常に追いやられ、迫害された弱者であり、敗者でした。人類は敗者の中の敗者として進化を遂げてきたのです。”

“進化の原動力になったものは、常にニッチを探し求めた敗者たちのチャレンジだったのです。”

“「踏まれても踏まれても大切なことを見失わない」これこそが、本当の雑草魂なのです。”

あげたら切りがありませんが、「自分の個性を大切にして、優劣や勝ち負けにとらわれず、自分の人生をしっかり生きてほしい」という稲垣先生の思いが伝わってきて、若者ならずとも強く印象に残りました。

私の心に特に響いたのは、“与えられた時間を精一杯大切に生きる。そして、命のバトンを次の世代に渡して死んでゆく。それが生物にとって「生きる」ということす。”という一節。

人生の折り返し地点をとっくに過ぎた身であるだけに、生きてきた意味について、そして死んでいく意味について、改めて思いを巡らすこととなりました。

死ぬことで命が引き継がれていくなどとは、今まで思いもしなかったこと。「死ぬことが、生きる目的」と考えると(もちろんそれだけが目的ではありませんが)、これからの人生であれこれ思い悩むことも少なくなり、目に映る景色も違ってきそうです。