えむと、メモランダム

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『自衛隊は市街戦を戦えるか』を読みました。

自衛隊は市街戦を戦えるか (新潮新書)

2020年31冊目の読書レポートは『自衛隊は市街戦を戦えるか』(著 二見 龍/新潮新書/初版2020年8月20日)。

書店で思いがけないタイトルが目にとまり、手に取りました。

平成の時代になってから、国民の自衛隊に対する視線は随分変わってきたように思えます。

大きな災害のたび、自衛隊員による救助・復旧活動を目にすることが多くなったことも、理由のひとつかもしれません。

けれど、自衛隊の最も大事な使命は、いざというときに、国土を守り、国民の命を守ること。そのための“武装集団”であることは不変です。

本書は、元・陸将補(軍隊でいえば陸軍少将)で、陸上自衛隊で作戦・教育訓練に携わってきた著者が、陸上自衛隊の実情を明らかにし、陸上自衛隊のこれからのあるべき姿について提言したもの。

著者自身が“最強の部隊”を追求した、第40普通科連隊長在任時のエピソードを交えながら、自衛隊の装備・訓練、組織風土、人材育成などについて、問題点や課題を指摘し、真価を発揮する“武装集団”を作っていく道を探っていきます。

私自身、自衛隊について特に強い関心があるわけでもなく、本書の内容は初めて知ったことばかり。

現代の戦争は、サイバー戦や情報戦を組み合わせる「ハイブリッド型」に変貌。「国家対国家の大規模総力戦」から「限定的、短期終結」型へ変化し、市街地が重要な攻防の場所になっている。

市街地で戦い抜くには、個々の戦闘員の能力向上と、高い戦闘技術の保有が必要となる。

けれど行われているのは、旧態依然の陣地攻撃訓練が中心で、隊員の装備も改善なかばの状況にある。

自衛隊内部で行われる「戦技競技会」が重視され、訓練時間の確保に影響を及ぼしている。

自衛隊員は50代から定年退職が始まり、せっかく磨いてきた技術が、生かされていない…。

戦争の様相が大きく変わっていることを認識させられるとともに、現在の陸上自衛隊が果たしてそれに対応できる状態にあるのか、考えさせられることになりました。

もちろん言うまでもなく、国民が巻き込まれる市街戦などあってはならないこと。絶対に起きてほしくはありません。

けれど、だからといって、万が一のための備えをおろそかにすることはできないでしょう。

著者は「現在の装備と戦い方のままで、市街戦になったら、多くの損害が発生することは避けて通れない」と指摘しています。

著者の懸念が現実のものとならないよう、万全な態勢を整えてもらいたいと思わずにはいられません。

ところで、本書を読んで一番驚いたのは、これまでの戦争で多くの犠牲を出したにもかかわらず、いまだに「突撃」の訓練が行われていたことでした。

訓練には理由があるようですが、あくまで訓練だけだと固く信じています。