えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『定年後の作法』を読みました。

定年後の作法 (ちくま新書)

2021年3冊目の読書レポートは『定年後の作法』(著 林 望/ちくま新書/初版2020年12月10日)。

私はすでに“定年後”の身ですが、今も個人事業主として古巣の仕事を請け負っているせいか、その感覚はほとんどありません。

ただし、それなりの歳になっていることは間違いなく、リンボウ先生がどんなことを言っているのか興味があって、手に取りました。

本書は、リンボウ先生が、定年後(会社や組織を離れた後)の生活について、その心構えや、過ごし方を、自身の経験も踏まえながら伝授するもの。

組織を離れた「個(弧)」の生活では、自省心と自制心から生まれる「程の良さ」が大切であり、それは夫婦でも同じ、といった話から始まり、

旅の楽しみ方、時間の使い方、趣味の持ち方、家事や地域との関わり方、さらに老後の生活設計と終活についてなど、多岐に渡って“リンボウ流定年後生活術”が開陳されています。

さすがに、紹介されている先生の生活スタイルを、そのまま取り入れるのは無理な話。

けれど、“人間が仲良く暮らすには「付かず離れず」の距離感とお互いに独立の個人としての敬意が必要”

“努力しないで、あとで後悔するのはつまらない。努力して、それ相応の実りを手にすることこそ、生きていることの大きな楽しみ”

“五年後、十年後の目標や計画を立てるより、「今日、何をやるか」が大事。今日一日を有意義に生きることに集中しよう“

先生の言葉には説得力があり、刺激になります。定年後とはいわず、もっと若いときから意識しても良さそうです。

ところで先生は、「生きがいをもって暮らし、やるべきことは充分やって、“立つ鳥跡を濁さず”というふうにきれいに人生を終えることが理想の大往生だ」と語っています。

先生が理想とするくらいなので、私にはかなりの難題ですが、少しは近づきたいもの。

そのためには、健康に気を配り、歳を取っても新しいことを身につける努力を重ね、その一方で、人生の始末にも心を砕く。

そのくらいの“作法”は、心がける必要がありそうです。

最後に登場する、「人生は最後の最後まで努力の積み重ね」という先生の言葉を噛み締めました。