えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』を読みました。

サラ金の歴史-消費者金融と日本社会 (中公新書 2634)

2021年12冊目の読書レポートは『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』(著 小島庸平/中公新書/初版2021年2月25日)。書店で目にして手に取りました。

 

もう20年以上も前に、仕事の関係で大手サラ金の研修施設を訪ねたことがあります。

施設が立派なだけでなく、担当の方も社員教育に熱心で、サラ金のイメージが一変させられました。(本書でも社員教育について記述があります)

本書は、東京大学大学院准教授で日本経済史が専門の著者が、1960年代に誕生したサラ金の歴史を、その前後1世紀にわたり、「金融技術」と「人」(創業者・従業員・利用者)の視点から振り返るもの。

多数の文献を分析し、家計の内部構造(夫と妻の“せめぎあい”)にも着眼しながら、日本の社会や経済の変貌と不可分であったサラ金の栄枯盛衰を、多角的に描いています。

金を貸すにはリスキーな存在だった戦前のサラリーマン。そのサラリーマンに、“手軽な副業”として推奨された貸金業。

人々の「義務感」と「競争意識」が生んだ高度経済成長期の電化製品の普及拡大とそれを支えた月賦・割賦販売。

「現金を月賦販売する」という発想から生まれた主婦向けの「団地金融」。

“表の金融”にこだわり、理想を掲げて貸金業の地位向上を目指した、サラ金創業者たち。

60年代の人事評価システム(「情意考課」)が生み出した、出世のための“前向き”な資金需要と、小遣い制のサラリーマンのため、その資金確保に応えたサラ金。

石油危機をきっかけに、生活費の穴埋め(“後向き”)の借入申込が増加し、融資対象として取り込まれていく女性や低所得者。

「男らしさの価値体系」を背景に、自殺を選ぶ男性多重債務者。

貸金業規制法がもたらしたサラ金の“冬の時代”を、銀行との関係強化、リストラ、社内体制の整備で乗り切り、急成長を実現した1990年代。

今世紀に入り長引く不況で貸し倒れが増大。改正貸金業法がきっかけとなって厳しい状況に追い込まれ、銀行の傘下に組み込まれた現在…。

図表やグラフを交えて進む著者の話は明快で、興味深いことばかり。サラ金の成長と停滞の背景、社会や家庭との関係、サラ金の持つ革新性と影の部分がよくわかりました。

高金利や過酷な取り立は社会問題となり、サラ金に対するマイナスのイメージはなかなか拭えません。

けれど、社会がサラ金を必要とする一方、必要とされるためにサラ金が技術を磨き、努力してきたことも紛れもない事実。

そこに冷静に目を向けなければ、サラ金を正しく評価することはできないと思い知りました。

「わずかであっても金融機関に金を預けている私たち自身が、究極的にはサラ金の金主だった。」という著者の言葉が、頭から離れません。