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『写真家 沢田教一展-その視線の先に』に行ってきました

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会社の帰りに一足延ばし、日本橋の髙島屋で開催中の写真展『写真家 沢田教一展-その視線の先に』に行ってきました。

この写真展は、ベトナム戦争で必死に川を渡る親子の姿を撮影した『安全への逃避』でピュリツァー賞を受賞し、1970年カンボジアで取材中に34歳で殉職した写真家・沢田教一の回顧展です。

会場では、戦場での写真に加え、故郷青森の風景や東南アジアの人々をとらえた写真など約150点が展示されています。そのなかで、目をひくのはやはりベトナム戦争で撮影した兵士や市民の写真。戦争初期には比較的穏やかだったアメリカ兵の表情が、戦争が泥沼化していくなかで、眼光鋭く険しいものになっていく様子は心に強く残り、何の罪もない一般市民の悲しげな表情は胸にせまります。

もっとも、沢田さんはそんなつらい写真だけをねらっていたわけではなく、奥さんのサタさんには、「そこに生きる人々を、風土を撮りたい」と言っていたそうです。作品には、子供たちの笑顔や日常風景を撮影したものもあり、その思いが伝わってきます。
また会場では、愛用のカメラ、使っていたヘルメット、直筆の手紙やメモといった遺品も展示されているのですが、それらをじっと見ていると、戦場の沢田さんが目の前にいるような気がしてきました。

ベトナム戦争が終結して40年以上が経ち、戦争の記憶もどんどん遠のいていきます。沢田さんのことを知る人も少なくなっているかもしれません。しかし本写真展を見て、沢田さんの業績は決して忘れてはいけないものであり、できるだけ多くの人に作品を見てもらいたいと心から思いました。
順路の最後に、サタさんが撮影した印象的な写真が数点展示されています。沢田さんに静かに寄り添っているようでした。