えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『この世界の片隅に』を読みました。

この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス) 

この世界の片隅に : 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に : 下 (アクションコミックス)

2018年2冊目、3冊目、4冊目の読了は、『この世界の片隅に 上、中、下巻』(こうの史代/双葉社 初版 上巻2008年2月12日 中巻2008年8月11日 下巻2009年4月28日)。映画が話題になったときに購入し、そのままになっていた3巻を読み通しました。ちなみに映画は観ていません。

映画がヒットしたので、ストーリーはよく知られているかもしれませんが、広島から呉に嫁いだ18歳の主人公すずの姿を通して、戦争に巻き込まれながらも日々懸命に生きていく庶民の姿が、柔らかいタッチで丁寧に描かれています。

食料をはじめとする物の不足、空襲、近親者の死。戦争は普通に暮らしている人を苦しめますが、そんななかでも、周囲の人を気遣いながら明るく健気に立ち振る舞う主人公の姿は心に残りました。

漫画では、当時の庶民の暮らしぶりが細かく、生き生きと描かれていて興味深く読んだのですが、着物を裁って「もんぺ」にする方法、衣料切符の点数、玉音放送の様子など漫画ならではの表現も面白く、活字にはない「漫画の力」を実感させられます。

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(この世界の片隅に<上>P92)      (この世界の片隅に<中>P123)

また本書では、欄外のところどころに漫画を補足する短い解説が書かれています。この解説で初めて知ったことも多くありましたが、広島に原爆が落された後、救助活動に向かった数千人の呉市民が二次放射能で被爆したという事実には心が痛みました。私たちは「広島」「長崎」のほんの一部しか見ていないということに気づかされます。

漫画は、昭和21年1月、すず夫婦が駅で出会った戦災孤児の少女を家に連れて帰り、家族がとまどいながらもその少女の心配をするところで終わっています。困難が続く中でも、新しい一歩を踏み出そうとする主人公たちの姿に温かいものを感じましたが、かけがえのないものを容赦なく奪っていく戦争の悲惨さに、改めて思いを致しました。

読後感(よかった)