えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『観察の練習』を読みました

観察の練習

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2018年12冊目の読了は、『観察の練習』(菅俊一/NUMABOOKS 初版2017年12月1日)。書店で目にして買い求めました。内容に関心を奪われていたため、うかつにも、読み始めてから菅さんが『ヘンテコノミクス』(マガジンハウス)の原作者であることに気がついたのですが、読み終えて、『ヘンテコノミクス』で菅さんの果たした役割が少し理解できた気がしました。

菅さんは、「日常の中の小さな違和感」に、私たちを驚かせたりワクワクさせたりするアイデアを生むヒントが隠れている、「観察」とはその日常にある違和感に気づくことだとして、本書では、菅さんに捉えられた違和感を写真と文章で示して「観察」の具体例を紹介し、そして読者にも日常を「観察」することを提案しています。

本書には、56の観察例が掲載されています。「芝生のはげた痕跡」「ゴミの捨て方」「コンビニ弁当のフライにかけられたソース」「地図アプリの最短ルート」「自販機のキャッチコピー」「駅の看板」「商店のシャッター」「ハンバーガーの包み紙」「店員さんの“いらっしゃいませ”」「赤青鉛筆」「通風口にぶらさがっている紐」「マンホールのフタ」など、どれもありふれたものばかりで、普段それを見て何かを気にすることはありません。

しかし菅さんは、そこに人間の行動原理、先入観の支配、さまざまな創意工夫、概念(形のないもの)の現実化、多様なコミュニケーションなどを発見します。その観察力、ものの見方の奥深さには驚くばかりでしたが、見過ごしていたものに気づくことの面白さが伝わってきて、自分も「観察をしてみよう」という気にさせられました。

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(P15「無意識に取る最短経路」 写真 菅俊一)

本書が面白いのは内容だけではありません。装幀の表紙と背にあるタイトルは、見る角度、距離によっては白い線と点しか現れず(ネット書店の画像と自分で撮った写真を対比しました)、また、文字が回転していたり、流れていたり、ひっくり返っていたりするページなどもあって、読者を刺激します。

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(左P25「箱の中の記録」より 右P201「理想の風の姿を見る」より)

本書を読み終えた後、「観察」にチャレンジしてみましたが、実際は簡単ではありません。菅さんのような観察力を身に着けるには、相当“練習”が必要なのでしょう。しかし何も発見できなくても、今までと違った目で日常の世界を見つめること自体、新鮮で楽しいものだと気がついたことは収穫でした.

これから自分なりの「観察」を意識してみたいと思います。

読後感(よかった)