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読んだ本と出来事あれこれ

『官僚たちのアベノミクス-異形の経済政策はいかに作られたか』を読みました

官僚たちのアベノミクス――異形の経済政策はいかに作られたか (岩波新書)

2018年22冊目の読了は、『官僚たちのアベノミクス-異形の経済政策はいかに作られたか』(軽部謙介/岩波新書 初版2018年2月20日)。書店で目にして、手に取りました。

本書は、安倍首相の考えにあった経済政策が、政権の最重要政策「アベノミクス」として形成され動き出していくまでのプロセスを、延べ120人ものインタビュー、公文書、記事録、メモ、日記などをもとに明らかにしたものです。著者は時事通信社の解説委員を務めていますが、「アベノミクス」そのものを論評したものではありません。

2012年11月、民主党野田総理の突然の解散宣言がアベノミクスの始まりともいえますが、本書ではその前から民主党政権に見切りをつけて自民党に走る官僚の姿が描かれ、その後総選挙での自民党の大勝、第二次安倍内閣の発足、黒田日銀総裁の誕生、異次元緩和のスタートと話は進んでいきます。

民主党政権時代と打って変わり、溌剌として動きまわる官僚たち、政府と日銀との攻防、安倍首相と経団連会長との確執、安倍首相を支えるリフレ派の経済学者たちの意気込み、GPIF改革の思惑。どの話も興味深く読みましたが、主役、わき役、敵役、黒子によって一国の経済政策が短期間で大きく転換し、経済が大きく動き出していく様子はさながらドラマのようでした。

また本書を読むと、政策がどのようにして生まれ、形となり、実行されていくのかその動きがわかるのですが、それを支える官僚の力を改めて思い知ります。ところが、民主党政権は政治主導を唱え官僚を排除。「官僚を敵視するかのようだった」という言葉が出てくるようでは、官僚のモチベーションも上がらず、力も出なかったかもしれません。

もちろん、官僚の高い能力は、正しく発揮されてこそ価値があるものです。本書を読んでいるとき、財務省の文書書き換えが明らかになりました。真相はわかりませんが、官僚により行政が歪められるなどということは、いかなる理由があっても決して許されることではないはずです。安倍一強政権のもと、この問題で官僚たちがこれからどう動くのか目が離せません。

読後感(面白かった)