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『幸福寿命』を読みました

幸福寿命 ホルモンと腸内細菌が導く100年人生 (朝日新書)

2018年37冊目の読了は、『幸福寿命』(伊藤 裕/朝日新書 初版2018年3月30日)。書店で目にして手に取りました。

現在、日本人の平均寿命は男性が81歳で女性は87歳。ところが、先進国の寿命は延び続けていて、2045年には100歳に達するという予測もあるそうです。もっとも、単に寿命だけが延びても仕方ありません。健康であるあることはもちろん、幸せな時間を過ごせることが何より大切に違いありません。

本書は、慶応義塾大学医学部の教授である著者が、生きる目的は「健康でいること」より「幸せになること」であるとして、「幸せを感じていられる期間」(=「幸福寿命」)を一日でも長く享受できる方法を、その鍵を握るホルモンや腸内細菌のメカニズムを通して示したものです。

本書では医学的な話だけでなく、「幸せになるための要素を積み重ねても(ボトムアップ)幸せにはならない。幸せそのものを追い求めていく(トップダウン)中で、いろいろと幸せなことが自然に起こってくる。」という話から始まり、「幸福は“あいだ”にある」という著者の持論や「幸福」に関する哲学的な話が多く登場します。

深い話は少し難しいところもあり、著者が強調している「幸福は“あいだ”にある」というのも最初はピンときませんでした。しかし話がホルモンのことに進んでいくと、その意味が具体的なイメージとなって浮かび上がってきて、“あいだ”の意味に気づかされることになります。

本書では、ホルモンと密接に関係するミトコンドリアの説明があった後、体の中で活躍するさまざまなホルモンや腸内細菌のことがわかりやすく紹介されています。その働きを知ると、人間の体というのは実に不思議で、よくできているものだと感心するしかありません。人間は健康に生きていけるようにプログラムされているとさえ思えてきます。

とは言え、環境、食べ物、性格、遺伝など人それぞれであり、誰もが100歳まで生きられるわけではありません。しかし本書で紹介されているヒントを参考にして、ホルモンの働きを高める生活を送り、腸内細菌を生かせば、健康で幸福な人生に一歩近づくことは間違いなさそうです。

読後感(参考になった)