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『人類との遭遇 はじめて知るヒト誕生のドラマ』を読みました

人類との遭遇:はじめて知るヒト誕生のドラマ

2019年2冊目の読書レポートは、『人類との遭遇 はじめて知るヒト誕生のドラマ』(著 イ・サンヒ、ユン・シンヨン/訳 松井信彦/早川書房 初版2018年12月25日)です。書店で目にして手に取りました。

人類の起源や進化をテーマにした本はよく目にします。「私たち人類(ホミニン)は、一体どういうプロセスを経て今ここにいるのか」ということに好奇心が刺激される人が、それだけ多いのかもしれません。

著者のイ・サンヒ氏はアメリカ在住の韓国人人類学者。ユン・シンヨン氏は韓国在住のサイエンスライター。本書は、韓国の雑誌と新聞に連載されたエッセイをもとに出版された本を翻訳したものです。

この種の本では、人類の進化を、年代を追って辿っていくものも多いようですが、本書は、過去から現在までの人類学の動きを織り交ぜながら、人類の起源や進化に関する様々な物語を22話収録しています。

「ホミニンのなかでも“最初の祖先”は、誰なのか」、「私たちが肉好きになったのはどうしてか」、「ホミニンはどうやって“毛皮のコート”を脱いで今の皮膚になったのか」、「農業は豊かな暮らしと繁栄をもたらしたのか」、「ヒトの脳はなぜ大きくなっていったのか」。

面白い話が次々登場し、何百万年前のはるか昔の世界に、自分も立っているような気がしてきます。

なかでも、「農業を採り入れたために人類は不健康になった」、「人類ははるか昔から利他的な気遣いがあった」、「直立二足歩行が人類の文化・文明の礎となったが、腰痛、心臓病、危険を伴う出産といった代償が伴った」、「人間のおしゃべりは、他の霊長類で行われるグルーミング(毛繕い)と同じ」といったエピソードは印象に残りました。進化のすべてが私たちに都合がよかったわけではなさそうです。

それにしても、ホミニンの化石から生存した年代どころか、利き腕や、皮膚の色まで推定してしまう科学技術の進歩には驚かされます。それが、学者の間で論争が巻き起こる原因でもあるようですが、これからも思いもよらない新しい発見があるに違いありません。

本書によると、ヒトゲノムは進化を続けていて、しかもその速さは文明の進歩とともに、加速しているそうです。

もっとも、進化=進歩でないのは言うまでもありません。このまま地球の温暖化が進み気温が上昇すれば、皮膚の色や形はまったく違うものになり、食糧が不足して宇宙食みたいなものが普通の食事になってしまったら、口や顎が小さくなって、顔の大きさや造りが今と似ても似つかないものになりそうです。

そんな世界は御免ですが、100万年後、200万年後の世界に住んでいる人類は、一体どんな姿で、どんな生活をしているのか想像は膨らみます。タイムマシンでもあれば、一目この目で見てみたいものです。