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『喪失学「ロス後」をどう生きるか?』を読みました

喪失学 「ロス後」をどう生きるか? (光文社新書)

2019年37冊目の読書レポートは、『喪失学「ロス後」をどう生きるか?』(著 坂口幸弘/光文社新書 初版2019年6月30日)。書店で目にして手に取りました。

わが家で飼っているマルチーズは今年で10歳。大切な家族の一員です。ただし、まだまだ元気とはいえすでに高齢。マルチーズの平均寿命を考えると、一緒にいられる時間はそうは長くありません。

最近は、いつか訪れる妻や子供たちの(私もかもしれませんが)「ペットロス」がちょっと気になるようになりました。

本書は、生きていれば誰でも必ず体験する「喪失」(ロス)について考えるもの。死生学、悲嘆学の専門家で、大学教授の著者が、「喪失の意味」、「喪失がもたらす影響」、「喪失と向き合うために必要なこと」、「喪失のあとの生き方」、そして「喪失への備え方」について解説。最後に読者が自分の喪失体験を振り返り、自分自身を理解するためのワークも紹介しています。

「喪失」といっても、ふだん改まって考えることはありません。大なり小なり何かを失うことは、決して特別なことではないからでしょう。

しかし重大な喪失は、ときに精神的・身体的に深刻な影響を及ぼすことがあり、喪失と折り合いをつけていくというのは、人生をより良く生きていくための大切なスキルかもしれません。

本書では、その「喪失との向き合い方」と、「喪失後の生き方」について著者が丁寧に説明しています。

「向き合い方に正解はない」、「自然に従う」、「あせらない」、「自分をゆるす」、「人にたよる」、「身体を休める」、「気持ちを言葉にする」、「思い出を大切にする」…。内容はとてもわかりやすく、うまく実践できれば受けた傷は癒え、ポッカリあいた“心の穴”も小さくなりそうです。

共感できたのは、「物事の良い側面に目を向ける」ということ。長所と短所、陰と陽。物事は表裏の関係にあり、著者の言うように、何かを失うことは、何かを得ることでもあります。(個人的には、昨年自分の父親を亡くしてそれを実感しました。)

失くしたものに目が行くのは仕方ないことですが、その代わりに得たものについて思いを巡らせば、気持ちも多少は違ってくるはず。そうすれば、その後の生き方も違ってくるに違いありません。

著者によれば、超高齢化社会・多死社会を迎える現在、「何が失われるのかをしっかり認識し、失うことにどう向き合うのかも人生の大きな課題」とのこと。自分にとっても決して他人事ではありません。

今まで、意識することなどなかった「喪失」ですが、本書を参考にして、これから先は上手に付き合っていきたいものだと、つくづく思いました。