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『金ピカ時代の日本人 狂騒のニッポン|1981年~1991年』を読みました

金ピカ時代の日本人

2019年45冊目の読書レポートは、『金ピカ時代の日本人 狂騒のニッポン|1981年~1991年』(著 須田慎太郎/バジリコ 初版2019年7月10日)。書店で目にして、手に取りました。

著者の須田氏は、写真週刊誌『フォーカス』の創刊時から専属カメラマンとして活動。数々のスクープをものにしてきました。

本書は、『フォーカス』に掲載された須田氏の写真とその撮影秘話などともに、『フォーカス』が創刊された1981年から、バブル景気がはじけた1991年頃までの日本を振り返るもの。

「ロス疑惑」、「日航機墜落事件」、「戸塚ヨットスクール」、「土光敏夫」、「財田川事件」、「土井たか子」、「田中角栄」…。時代を象徴する出来事や人物が、忘れかけていた事件や事故が、写真とともに次々によみがえってきます。

また、安倍首相(当時は安倍晋太郎自民党総務会長の秘書)と昭恵夫人の結納式のときの写真、学生服姿の若乃花、貴乃花兄弟の写真、献血をしている森喜朗氏と橋本龍太郎氏(二人とも首相になる前)の写真など、今となっては興味深い写真もたくさん登場。時代の流れを実感させさられました。

写真誌のスクープ写真というと、望遠レンズを使った隠し撮りのイメージがありますが、須田氏は、広角レンズを使い被写体に迫って撮影するスタイル。それだけに、作品は強い印象を残します。けれど、誰もが同じようにできるとは限らないでしょう。

山口組四代目組長竹中正久の写真を撮るために、姫路にある竹中組への訪問を繰り返す。三代目組長夫人田岡フミ子さんの写真を撮るために、毎回お見舞いの花束を抱えて入院先の病院を訪ね続ける。老人ホームの火災現場で、消火活動が続いている最中に建物に入りこみ、消防隊員の到着を狙う…。

本書で紹介されているエピソードは、須田氏の“カメラマン魂”を感じさせるもので、その抜きんでた強さがあったからこそ、相手の懐に飛び込むことができたのだと思います。

ところで、本書の最後に、1993年に撮られた「札幌雪まつり」の雪像の裏側の写真が掲載されています。初めて見ましたが、その光景は華やかな表側とは似ても似つかず、どこか荒涼としたもの。

見せかけだけだったバブル景気と、バブル崩壊後の日本を暗示しているかのようで、妙に心に残りました。

「金ピカ時代」が金メッキの輝きでなかったら、その後の日本の社会はまったく違ったものになっていたかもしれません。