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『さし絵で楽しむ江戸のくらし』を読みました

さし絵で楽しむ江戸のくらし (平凡社新書)

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2019年47冊目の読書レポートは、『さし絵で楽しむ江戸のくらし』(著 深谷大/平凡社新書 初版2019年8月9日)。書店で目にして、手に取りました。

本書は、江戸時代の黄表紙や滑稽本などで描かれた“さし絵”や、歌舞伎や浄瑠璃のセリフを読み解きながら、江戸庶民のくらしを探訪するもの。

60点ほどの“さし絵”とともに、江戸のマナーやエチケット、婚姻事情、妊活、子育て、老後生活、ヒットソング(甚句)、おしゃれ(下駄と足袋)、食卓の風景、グルメといったテーマに沿って話が進んでいきます。

名刺を携えての年始の挨拶回り。「歩きタバコ禁止」・「立小便禁止」の張り紙。今と変わらない宮参りやお食い初めの様子。趣味に商売に女性と、老いても元気な老人。“個食”が常の食事風景。江戸の鮨事情……。

“さし絵”は面白いものばかり。当時の生活や文化がありありと目に浮かび、人々の息遣いが伝わってくるよう。暮らしぶりこそ違え、“さし絵”に描かれている庶民たちも、今の私たちと変わらぬ思いで、毎日を過ごしていたことがうかがい知れます。

見ているだけでも楽しい“さし絵”ですが、そこに書かれている会話を文字ではなく、生で聞いてみたい。本書を読みながら何度も思いました。

ところで本書では、江戸時代のヒットソングで、元祖ご当地ソングである「甚句」について、詳しく説明がされています。

それによると、文化・文政期を中心に、「越後甚句」が日本全国に伝播し、全国区の大ヒットソングになったとのこと。初めて知った意外な事実に、新潟県出身者として素直に驚いてしまいました。

今や「甚句」を歌う人など限られていますが、歴史的な事実としていつまでも残ってほしいものです。