2020年4冊目の読書レポートは、『はたらく浮世絵 大日本物産図絵』(監修 橋爪節也 曽田めぐみ/青幻舎 初版2019年12月10日)。書店で目にして手に取りました。「読んだ」というより、「観た」というべきかもしれません。
本書によれば、『大日本物産図絵』は、明治10年(1877年)の「第1回内国勧業博覧会」に出品された、浮世絵師・三代歌川広重の筆による錦絵。
全部で118図から成り、日本各地の名産品をテーマに、江戸から明治初期の土地土地の風景や人々の様子が描かれています。
ただし、広重がすべて現地に赴いて写生したわけではなく、別の書物を参考に描いたものもあるそうです。
本書はこの『大日本物産図絵』を、働く人々”を切り口に再構成し収録したもの。
働く様子で、「物産品をばんばん見世る」、「和気あいあいとはたらく」、「女性がいきいきはたらく」「力自慢がどしどし集まる」、そして「職人技がきらきら輝く」の5つに分類し、解説を加えて色鮮やかに掲載しています。
紹介されている名産品の数々は、今の時代に続くもの。伝統の重みや豊かな地域性は、目をひきます。
ただ何といっても印象的だったのは、名産品をとり(採る・捕る)、作り、売る、老若男女が生き生きと働く姿。
明るい話し声が、楽しそうな笑い声が、大きなかけ声が、紙面から賑やかに聞こえてくるようで、活気とたくましさに満ちています。
そして、使う道具、働く格好など当時の風俗は珍しく、また時々登場する構図に趣向を凝らした絵は面白く、最初から最後まで興味が尽きることはありませんでした。
この時代、人々は生業に忙しく、暮らしは決して楽ではなかったでしょう。けれど、今の私たちに比べれば、心はずっと豊かだったかもしれません。
(第1章 物産品をばんばん見世るから「駿河国竹細工製の図」)
(第2章 和気あいあいと働くから「武蔵野国浅草海苔製図」)
(第3章 女性が生き生きはたらくから「陸奥国真綿製之図」)
(第4章 力自慢がどしどし集まるから「丹後国鰤磯場之図」)
(第5章 職人技がきらきら輝くから「下総国醤油製造之図」)