えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『統計で考える働き方の未来 高齢者が働き続ける国へ』を読みました。

統計で考える働き方の未来 ――高齢者が働き続ける国へ (ちくま新書)

2020年40冊目の読書レポートは『統計で考える働き方の未来 高齢者が働き続ける国へ』(著 坂本貴志/ちくま新書/初版2020年10月10日)。書店で目にして手に取りました。

私事ですが、昨年末に長年勤めた会社を退職し、今年の1月に独立開業しました。

といっても、クライアントは、今のところ古巣の一社だけ。仕事の内容(法務部門のサポート)も、仕事の量も、社員時代とほとんど変わりませんが、縛られるものが少なくなり、気分的には随分違います。

“卒業後”の働き方としては、悪くないかもしれません。

本書は、リクルートワーク研究所の研究員である著者が、様々な統計をもとに、日本における労働の将来像を描き、高齢化社会での働き方を提言するもの。

著者は、賃金の推移、格差(非正規雇用)や家計の実態、年金の動向、就業実態など各種の統計や資料を詳しく分析。

そのうえで、日本がこれからも経済大国の地位を維持するには、高齢者が働き続けることが必須であり、そのためには、高齢者が無理なく働ける労働市場を創出すべきだとしています。

少子高齢化がさらに進めば、よほどのイノベーションでも起きない限り、日本の経済力の低下は免れないでしょう。

一方、社会保障費は膨らむばかりで、「仕送り方式」の年金制度も給付水準が維持できるか先行きは不透明。

国は、「一億総活躍社会」の実現を謳い、高年齢者の雇用ルールを変更するなどして、労働力の確保(=社会保障費の確保と年金資金の確保)に躍起になっています。

高齢者が、年金を片手に、悠々自適な老後生活を送ることなど、もはや叶わぬ夢かもしれません。

著者によれば、昨今、“仕事中心”より “生活中心”と考える人が増えているのは、仕事は生活を優先しながら細く、長く続けるものだという意識に変化してきたから。

それは「長く働かざるを得ない」という現実を、やむを得ないものとして消極的に受入れていることの現れだとも語っています。

もはや高齢者が働くことは当たり前。考えるべきことは、「どんな仕事がいいのか」ということになりそうです。

著者は、高齢者の受け皿として、再雇用制度は必ずしも主流にはならない。また、年金を受給しながら働く高齢者は、無理なく仕事をすればいいということから、保安、運搬、清掃、自動車運転といった「現場労働」こそが、高齢者にふさわしいと言います。

本書では実際に「現場労働」に従事する高齢者の声も紹介されていますが、確かに高齢者の負担は少なく、煩わしい人間関係も少なく、また「現場労働」は社会に不可欠な仕事であり、有望な労働市場であることは間違いなさそうです。

もっとも、仕事には向き不向き、好き嫌いがあることも事実。そもそも働き方は人それぞれであり、選択肢はたくさんあるに越したことはありません。

30代、40代のうちから、60代以降(あるいは50代以降)の働き方を考え、選択肢を増やす努力を重ねることが、今後ますます求められることになるのでしょう。

それにしても、大変な時代になりました。