えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『マチズモを削り取れ』を読みました。

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2021年24冊目の読書レポートは『マチズモを削り取れ』(著 武田砂鉄/集英社/装丁 寄藤文平 古屋郁美/初版2021年7月10日)。

発売早々にサイン本を購入したものの、しばらく積ん読状態。遅ればせながら読み終えました。

本書は、フリーライターの武田さんが、「マチズモ」(=男性優位主義)を「この社会で男性が優位でいられる構図や、それを守り、強制するための言動の総称」と位置づけ、その実態を明らかにするもの。

女性編集者からの怒りと疑問に満ちた「檄文」を受け取った武田さんが、マチズモの現場を検証し、また関係者の取材も丹念に行い、社会にしぶとくこびりついているマチズモについて考えていきます。

女性編集者の指摘をきっかけに、武田さんが暴いていくマチズモは全部で12の場面。

駅構内や街路での歩行、電車内の痴漢、大型書店の文学コーナー、新幹線のトイレ、住宅選び、結婚式の披露宴、参加できない会話、運動部の女子マネージャー、体育会(運動部)の権力構造、高級寿司店に漂う空気、バーやスナックでの光景、そして人事好きのオジサンたち。

私もその一人ですが、これがマチズモだと気づく日本人男性は、まずいないでしょう。

しかし、武田さんの着眼は鋭く、追及は深くて厳しいもの。女性という理由だけで背負うリスク、押し付けられる役割、女性を排除(無視)する男の身勝手な姿が浮き彫りになり、“日本的マチズモ”が目の前に現れてきます。

「ジェンダー平等」が社会の基本であることは、多くの人が理解しているはず。けれど“日本的マチズモ”が温存されている限り、所詮“絵に描いた餅”だということを思い知らされました。

このままでは、社会の活力は失われ、日本は世界から取り残されそうですが、長年にわたり染み付いたマチズモを一掃するのは、簡単ではないでしょう。

ただ、今の若い人の意識や行動は、私の若い時分とは随分違ってきています。結婚しても共働きが当たり前になりました。

世の中のしくみを当たり前だと思わない、古い価値観に縛られない、目の前の違和感に声を上げる…。

期待し過ぎかもしれませんが、そんな若い人が増えていけば、マチズモは弱まるはずであり、そうあってほしいと思います。

もちろん、「自分はもう関係ない」と若い人にだけに責任を負わせるわけにはいきません。

せめて問題意識を絶やさず、足を引っ張らないようにするつもりです。